気分が落ちている時、そこから自力で這い出すのは案外難しいとつくづく思う。
何も手につかないのだ。何かする気になどなれない。それが脱出の糸口になるとしても。
しかし放っておけば、苦痛が長引くだけである。
何かやりたいことはないか。自分を甘やかせ。
全く何も、やりたくはなかった。
以前なら酒に逃げたが、それによって失うものを天秤にかけると、今は飲む気にはなれなかったのだ。
こういう時は普段我慢しているものを食べたりするのが良さそうだが、全く食欲も意欲もない。食べればエネルギーになりそうなのに。何かないか。・・・・あ。
ガスパチョ。
体調が悪い時に、無理をしても作って食べたくなる冷製スープだ。あれなら飲みたいかも!
作るの面倒だ。今回は簡単なものでいい。レシピを検索する。トマトの水煮缶を使い、材料全部ミキサーにかけるだけ、というものを作ることにした。
できたガスパチョを冷蔵庫に入れている間に、エルを病院に連れて行く。
予約を入れていたのであまり待たずに済んだ。先生は相変わらず時間をかけて丁寧に診てくれた。
家に帰り、ガスパチョを飲む。
ちょっと酸味が足りなかったが、ニンニクが効いて美味しい。ミキサーにかけたのは、トマトの水煮缶ときゅうりとタマネギとパプリカ。ここにオリーブオイルとバルサミコ酢と塩を入れて混ぜた。
悪くない。
出口が見えてきた。
あともう少しだ。
お風呂に入ったら、アイスクリームに洋酒をかけて食べよう。
少し、ワクワクする。
人と話すこと。
ガスパチョと、風呂上がりにお酒をかけたアイスクリーム。お気に入りの入浴剤があれば、なお良し。
落ちた時の処方箋。
今度はもっと早く対処する。