3年ぶりの福岡行きが決まった。
食べるもの美味しい、自然も都会もいい、義父母のおもてなしも有難い。
楽しみなはずなのに、どうもすっきりしない。どこか、気が重いものがある。
それが何だかは分かっていたが、考えたところでどうしようもないので考えないようにしていたのだ。なのでただ何となく、しこりのようなものが常に付きまとっていたのだ。
行くことが決まると、まずは交通手段の確保である。
本州ど真ん中から九州だ。時間を有効に使うには飛行機になる訳だが、私は飛行機が苦手だった。なのでこのところ、行きは新幹線帰りだけは我慢して飛行機、というスタイルになっていたのだ。
今回もまずはそうするつもりだったのだが、私のせいで高い新幹線に乗ることになるのもちょっと申し訳ない。飛行機が嫌なのは、私だけなのだ。私一人が安い高速バスでいけばいいんじゃないかと思いついたのだった。
それでも問題はあった。
夜を徹して14時間。身体的なキツさもあるだろうし、なにより赤の他人と隣同士になって14時間は精神的に辛い。
独立したシートになっているのが理想だが、そうなると割高で、わざわざ高速バスにする意味がなくなってしまう。
何を妥協したらいいのか、頭を悩ませていた。
飛行機。早い。安い。ただし超絶怖い。
新幹線。高い。時間がかかる。しかし快適度はナンバーワン。
高速バス。隣に誰か座ってもいいなら安い。メチャメチャ時間がかかる。快適度は最悪。
何だか、怖いからと飛行機を嫌がっている自分のわがままで面倒なことになっている気がしてきた。私は腹を決めて、恐怖心を和らげる方法を考えることにしたのだ。
飛行機恐怖症の人は割と多い。ネットで、どう克服するかなどの方法をたくさん見つけることができたのだ。
まず、何が怖いのかを明確にする。私の場合、最初の急加速とゴーという轟音が怖かった。
それから、宙に浮いているという感覚。揺れ。
揺れや感覚的なものに関しては、「飛行機はいかに安全な乗り物か」というのを知ることで恐怖心は軽減するとか。また、目を閉じてオフロードバイクに乗っていることをイメージする、なんて人もいた。みんな苦労しているのだ(笑)私なんか数年に一度の旅行で済むが、仕事で乗らざるを得ない人は、苦労して工夫していた。
音に関しては、「ノイズキャンセリングイヤホン」。
外の音をほぼ完全にシャットアウトするというもので、あのゴーという地獄の咆哮を封じ込められるのだ。そのイヤホンで好きな曲でも聴けば、異世界へ行かれるという。
これなら間接的に、揺れや感覚の恐怖心も和らげてくれそうでもある。
私はノイズキャンセリングイヤホンの購入を打診してみた。
「これがあれば、頑張れそうな気がする。」
しかしその価格。約3万円。
「さ、3万・・・。」
まぁ私もさすがにイヤホンに3万は、と思わなくもなかったが、今後これで飛行機に乗れるようになれば、結果的にトータルで安くなるんじゃないかと思ったのだ。
ところがダンナは、別の案を持って来た。
「宿泊が一緒になってるツアーに申し込めば、飛行機とそんなに変わらない値段で新幹線に乗れそうだよ。」
「え!」
新幹線で往復。飛行機いらず。5時間という時間が惜しいが、飛行機の恐怖を免れるなら痛くも痒くもない。
ということで、憂いなく旅の準備ができることとなった。
あの心の中にへばりついていた嫌なものがなくなり、とても清々しい。5時間の道のりですら、楽しみだ。
ちなみに前回は、広島あたりまで爆睡していた(笑)
前日からしっかりコンディションを整えておきたい。