*そしてまた、長い夜・1の続きになってます。
眠くなる音楽が、ズラッと並んだ。おお、そんな手があったか。常々試してみたいと思っていたのだ。
YouTubeを開く。
どの曲も、「絶対眠れる」、「80秒で眠れる」、果ては「地球上で最も眠れる」などと、頼もしいタイトルだ。
最初に聴いたのは、オルゴールの曲であった。長くも短くもなかったが、さっぱり眠くはならなかった。癒し効果があったとも思えない。
次は、静かなオーケストラの曲。来い、眠気よ、来い、と思っているうちにこれも終ってしまった。
次も、静かな曲だ。宮崎駿のアニメか何かで流れそうな、どこか懐かしいような気持になる曲。
それを聴きながら思ったのだが、これで眠くなったら、宮崎駿の映画館ではみんな寝ていることにならないか。
もはやタイトルには胡散臭さしかなく、金にもならないのになぜこんなものをアップロードしたのか、不思議で仕方がない。暇なんだろう。良く寝てるんだろうな。
曲は役に立たなかったが、イモヅル式に思い出した。
以前旅行先で眠れない時に、睡眠導入アプリで雨の音を聞いているうちに寝てしまったことがあった。
あの時はお酒と眠剤をいつもの倍飲んではいたが、「旅行先」というハードルがないだけ気は楽だ。イケるかもしれん。
アプリには他にも、海の音、川のせせらぎ、森の揺らす風の音など自然の音が用意されている。
全部聞いたが、やはり雨音が一番、落ち着く気がした。
タイマー、どうしよう。
朝までイヤホン付けて音が流れてるのもいかがなものか。
かと言って、音がなくなった瞬間を感知してしまうのも怖い。具体的に眠れなかった時間が分かってしまう。
迷ったが、どうせ眠れないと諦めたのだ、感知したからどうだというのだ。タイマーを1時間でセット。
雨の音。
不思議と、トゲトゲしていた気持ちに丸みが出て来るような感じがしてくる。
何だか、懐かしい。
自然と色んなことを思い出す。
心地良い思い出ばかりだ。
とりとめもないことの繋ぎ合わせだが、それはやがて、支離滅裂な「夢」の世界への入口へと繋がっていく。
繋がっては現実に戻ることを繰り返していた。
これは、眠れるかもしれない。
ふと気がついたら、雨音は止んでいた。
はっと、目が覚める。
やったEE:AEB30眠れたEE:AEB30いつの間に寝てたよEE:AEB30
・・・って、起きちゃったってことだねEE:AEB64うわ~、またやり直しか。
いやいや、これがあれば眠れるのだ。もとい。
眠い目を擦りながら、スマホを立ち上げる。
どのアプリだったっけEE:AEB2Fええい、せっかくの眠気を逃してたまるものか、速やかに。
雨の音。OK。
何事も2回目というのは鮮度が落ちて、余計なことに気が行ってしまう余裕ができるものである。雨の音の向こうでブーンと鳴っている、扇風機の音が気になってくる。
これでは雨音の純度が下がる。まるで飛行機の中でショパンを聴いているようなものだ。
アプリの音量を上げる。
まだ扇風機の音は聞こえるが、仕方がない。さっきは寝れたのだ。安心せよ。
そう言い聞かせて目を閉じたが、やがて意を決して布団を出た。
トイレEE:AEB64
もっと眠くなってから行くより、今のうち行っておいた方がいいだろう。
またやり直しになってしまったが、これでもう、不安要素はなくなった。
いざ、おやすみ。
・・・。
雨音が、小さくなっていく。
フェイドアウトか?もう1時間経ったのか??タイマーのセットを間違えたか??
スマホを見ると、「この音量で聞き続けると、聴力に悪影響を及ぼします」というような警告が出ていた。
バカヤロー、そんなん明日にしてくれよ、睡眠導入アプリなんだから!安心して寝かせてよEE:AE5B1
アプリのボリュームを下げ、スマホ本体のボリュームを上げる。アホらしいが、これで安定はした。
いよいよ本番だ、いいかEE:AEB2Fいくぞ、ぽ子EE:AEB30頑張れEE:AEB30
二度目ともなると二番煎じの形相で、信頼度が下がっている。
なかなかさっきのような懐かしい思い出はやって来なかったが、気持ちはだんだん落ち着いてくるのが分かる。
それなのに、それなのに、いいところでイヤホンが痛いのである。
横を向くと、下になる方の耳が圧迫され、イヤホンが当たって痛い。
仰向けになると、どうも重力(引力との違いがわからん)で胸を押さえつけられているような気持になり、息苦しい。
耳だけ枕の横に落ちるような角度に工夫して、横を向く。
果たして、次のタイマーが切れたことには気がつかなかった。無事に眠れたようである。ダンナに起こされて、目が覚めた。
睡眠計測アプリによると、私の動きがなくなったのは3時頃。2時間は眠れたことになる。
深い睡眠率は、28%とのこと。
どちらもゼロの予定だったことを考えると、いくらかマシではある。
しかし、ひと晩寝たとカウントするには不十分だ。結局午前中を寝倒してしまうのである。
耳栓サイズの極小ノイズキャンセリングイヤホンってものはないのだろうか。
そしてそれは、掃除機とどっちが優先度が高いのだろうか・・・。
長い夜であった。