人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

知育タイム

犬のミツコがうちに来ることが決まると、娘たちと一緒にペットショップに向かったのだ。

揃えなくてはならないものが、たくさんある。

遠足のおやつのような、楽しい買い出しだ。

これ、どう?これもどう?

カゴの中身はどんどん増えていく。

「おもちゃも買ってあげよう。」

犬のおもちゃ売り場に行ってみたが、・・・無言。

何がいいのか、分からないのである。一体犬は、何をどうやって遊ぶのか。

売り場にあるものを見ても、全く意味不明だ。

その多くはぬいぐるみか紐のようなもので、これで遊んでいる姿が目に浮かばない。

押すと音が鳴るものも多く、犬の謎は深まるばかりであった。

どれも気が進まずにいると、「知育玩具」というものが目に付いたのだ。

これらは一様に変わった形をしていて、いかにも「知育」という感じだ。

どう知育なのかというと、中におやつを仕込み、「工夫すれば」出せるような仕組みになっているという。

「へ~、これ、いいんじゃない?」

使い方も見ずに、適当に1個買って帰ったのであった。それが、これ。

穴の中から、おやつを入れる。

「工夫すれば」、出てくるらしい。

・・・というので、穴の中にしこたまおやつを入れておいた。

たくさん食べられるように、パンパンになるまで入れた。

数日経って気が付いたが、どうやらみっちゃんは見向きもしなかった。

中のおやつが減った気配もないし、遊んでいるところもみたことがない。それはいつも、同じ場所にあった。

いい加減、中のおやつの鮮度がヤバくないか?

ケージから出し、役立たずのそいつを見て、実は自分が役立たずだと反省した。

だってこれ、私にもおやつの出し方が分からないのだ。いきなりそんなものをケージに置かれたって、ミツコとて無関心でも然るべきである。

遅ればせながら、ネットで使い方を調べてみた。

素材はゴムなので、振ればグネグネと曲がるようになっている。ブンブン振ると、中からおやつが飛び出してくるということだ。この知育玩具に必要な「工夫」は、「くわえて振る」ということなのだろう。

しかしだ。「振れば出る」ということを知らなければ、振りはしない。その最初の1回は、どうやったら生まれるのだろうか。

私が生んでやろう。目の前で振って見せる。おやつが出てくる。へ~、そうやるとそこからおやつが。ミツコ、学習。となれば良し。

その前に、この古いおやつを取り出さないと。

まず振ってみたが、ビクともしない。パンパンに詰めたからな。ほじくって取り出すか。

ところがこの穴の入り口に爪があり、出にくいようになっている。

こ、これ、どうやったら出せるん!?

私は力の限り振った。パンパンなのである、出る訳がない。どうしたら・・・。私の知能の低さを知る。

考えに考えて、爪楊枝を持ってきたのだ。これで爪を押さえたら、穴がそのぶん広くなるんじゃないか。

しかし穴が広がっても、今度は楊枝が邪魔で狭くなる。

角度だ。楊枝の角度を考えれば、爪を押さえても出口を広くすることができる。

犬の知育玩具とのことだが、これではぽ子の知育玩具、いや教材と言ってもいい。楽しむ要素などなく、私は真面目に取り組んだのだ。

時間をかけて、やっと全ての固くなったおやつを取り出すことができた。

さて、今度はおやつを小さくちぎって簡単に出るようにしたのだ。

それをミツコの前でブンブン振ってみたが、・・・全然出てこなかった。

どうやらこれは犬用ではなく、飼い主用らしい。