人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

ギャフン

え~、旅の話でも書くつもりだったのだが、その翌日に起こったことがあまりにも強烈だったのでそっちにしようかと思う。

バンド仲間がうちに来たのだ。

大人6人、子供2人で、ワイワイと飲んでいた。

「チーズフォンデュを食べる」というのが、ひとつの楽しみであった。

これは良かった。

美味しかった。

しかし私は「激辛料理をみんなで食す」というしょうもないことも考えていたのだ。

というのも、メンバーのひとりが初めて食べた中本(激辛ラーメンの店だ)を「あれなら余裕」のように嘯いていたので、ギャフンと言わせたかったのである。

まずはカップ麺の北極(中本で二番目に辛いラーメンだ。一番辛いのは実食済みとのことだったのだが、あれは冷やし麺。辛さはこちらのほうが強く感じるのではないかと思ったのだ)。

こちらは難なく食べていた。

なので自宅にあった激辛調味料を足したが、「ちょっと辛くなった」という程度でギャフンとは程遠い。

辛さ耐性のないべーしすと氏は悶絶していたので、確かに辛いはずである。

ということで真打ち、登場。

ドンキで買った。500円ぐらいした。

これはかなり強烈そうだ。

こういうものは、人数が多い方が楽しめる。

これを、ごく普通の安いレトルトカレー(中辛)に混ぜた。

いくらか中本に使ったが、恐らく袋のほとんどに近かったのではないか。

とは言っても、全部で5gだ。大した量ではない。

まずはギタリスト氏が食べた。

「うん、結構辛いね。」などと言いつつ、二口三口食べたところで「辛っEE:AEB30」と言って立ち上がり、右往左往し始めた。

水があったので手渡すとそれをギュッと飲み、「マジで辛い」。

彼は、それこそ中本の北極をさらに辛くして食べていたような人だ。このメンツの中では一番辛さの耐性がある。

さっきのカップ麺も「辛いね」などと調子を合わせて適当な感じで言っていたので、信じられず私もすぐに続いた。

ひと口目は辛さを感じなかった。味が良く分からない。

この間にかっ込まないと進めなくなると思い、一気に5口ほどかっ込んだ。

途中で「これは辛いかも」と感じたが、今思えば「辛い」うちはまだいいのである。だから油断した。

5口ほど食べてひと息ついたその後、猛烈な痛みが口の中を襲った。激痛と言っていい。

私は冷凍庫に走り、氷を口に含んだ。

じっとしてられず、それを噛み、それでも気が済まず吐き出し、また氷を口に頬張る。何をやっているんだ。

そして私の次に食べたらしい誰かも、「氷!氷!」と言って手を伸ばしてきた。

発狂しそうな辛さであった。この痛みから逃れる方法はなく、私は吐くことにした。痛みの元凶を排出すべきではないか。

長い間、トイレに籠っていた。

これでもいくらか効果があったのか、私には分からない。全く楽になった気はしない。

痛い部分は少しずつ下に下がっている。

激痛だ。

救急車を呼んでもらおうか迷ったが、原因は明らかであり、治療ができるとは思えなかった。何より、恥ずかしい。

やがて「大丈夫?」とダンナがトイレのドアを叩いた。

水、水が欲しい。しかしその一言が出てこない。

黙っていたら行ってしまうだろう。必死で一言「水ちょうだい・・・・・。」とだけ言い切った。

次は、トイレの鍵を開けなくてはならない。それもまた死ぬほど辛い。

映画のワンシーンのようだ。命を懸けて、鍵を開ける。

水を飲んでも、楽にはならなかった。

飲んでは吐き、飲んでは吐き、これで胃洗浄にならないかなどと考える。

遠くで「辛い!」「氷!」「なんだこれ!!」などと盛り上がっている声が聞こえる。あれが見たかったのに、自分がこの有様だ。

悶絶期、15分。激痛期、30分。やっと楽になったと思えたのは1時間ほど経ってからだ。

それでも動いたり喋ったりするたびにお腹が痛み、後遺症は数時間に及んだ。

激辛の行く着くところはここだ。

身の程をわきまえて、今後は慎重に挑戦していきたいと思う。

と、真面目に思った。