人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

そして三日目の決心

たったの二日でこの体たらく。

私はもう、普通の人間のサイクルでは生きられないのだろうか。

忙しさと無気力で、生活サイクルはメチャクチャになっていた。

それを正そうとつい二日前に決心したのだが、まず「平日飲まない」の壁にあっさり崩れそうになってしまった。

週明けはまだいい。飲み過ぎがたたって飲む気にはならない。

その翌日もまだ多少それを引きずっている。

習慣でちょっと心が揺れたりもするが、「決心」の前には耐えられる程度であった。

しかし3日目となると、アル中の如き拷問に近くなる。

私もダンナも、もうずいぶん飲んでないなという気持ちになっているところだ。何となく相手の顔色を窺っている。

明日はフレックスで11時出勤。

へー、じゃあ今夜飲めるね。

などと冗談とも本気ともつかない会話が何度も飛び交う。

エアコン壊れてるからね。

暑くてたまんないよ、非常事態だからね。

だんだん「本気」へと傾いていく。

フー、運動した後は「アレ」が一段とウマいよ。

筋トレの後だ。

ダンナが冷蔵庫を覗く。

一応だ。

最初に私は「決心したばかりですので」との意思表示はしてあった。

そしてその段階では単なる宣言でなく、本当に決心を貫くつもりであった。

しかしここまで来るともう、そんなものはどうでも良くなっていた。

来週から頑張ればいいじゃん。

決心なんか、いつでもできるのである。

思い立ったら毎日が吉日である。

ダンナがシャワーを浴びて出て来た時、私はYouTubeでゲームの宣伝動画を見ていた。

やがて「じゃあ」とか何とか言うはずである。

決心した後ろめたさがあるので、決定打はダンナにキメて欲しいところだ。

ところが、いつまで経ってもその声は聞こえてこない。

辛抱強く待ったが、とうとうダンナはテレビの前に座ってしまったのだ。

「・・・やらんの??」

痺れを切らせてこちらから声をかけると驚いたことにダンナは、「だって決心したんでしょ」と言い放った。

えーっ!?ここまで引っ張ってそれ!?

変な表現でアレだが、ラブラブシチュエーションの寸止め的なおあずけである。欲望の寸止め。ライオン、よだれダーラダラ。

しかし私は人間だ。

自分を顧みて反省し、新しく目標を立て、理性を持ってそれに従おうと決心したばかりじゃないか。

思えばこの数ヶ月、何度この誘惑に負けてその夜と翌日を無駄にしたことか。

ダンナの選択に間違いはない。否、私の決心に間違いはないのである。

「じゃ、ノンアルでも飲みますか・・・。」

こんな時のために常備してあったノンアルコールビールを持ってきて、テレビの前に私も座る。

テレビではただただ、ニュースが流れている。

無言。

なんなんだ、この味気無さは。

テレビが面白くないのか。

じゃあ何をする?時間ならある。

しかしどういうことか、何にもする気にならないのである。そのくせ退屈で仕方がない。

「つまらん。」

「つまらん。」

私には、この気持ちに覚えがあった。

以前喉の治療で2週間禁酒した時の気持ちである。

酒がない、というだけで全てが色褪せ、無気力の洞窟に放り込まれるのであった。

ほのかな苛立ちが眠気も遠ざけていたが、「起きていても仕方がない」という結論に達し、布団に入ることにした。

この二日、睡眠サイクルも正そうとした結果、寝不足になっていた。

本を読んでいるうちにすぐに睡魔は訪れたが、電気を消してからが長い。

体に馴染んだサイクルは、寝不足ぐらいでは変えられないということか。

結局そのまま朝になってしまった。本当に忌々しい。

ということで、昼まで寝倒してしまった。元の木阿弥以下である。

3日後の禁酒がこんなに辛いとは、そしてこんなに眠れないとは、本当に私はアル中に片足突っ込んでるんじゃないのかと不安になって来た。

というのも最近、休肝日があるからと安心できない「山型飲酒」というものを知ったのもある。

良く言われる「連続して二日間の休肝日」という理想も私には低いハードルであった。

しかしそれは体が飲酒によりダメージを受けていて飲めないだけであり、回復するとまたとことんまで飲んでしまう繰り返し、これは「山型飲酒」というアル中の特徴であった。

思ったよりも深刻な状態かもしれない。

やはり「決心」は覆すわけにはいきそうもない。