人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

母娘

買い物に行った時のことだ。

店に入ろうと思ったら、女性の二人連れがやはり入り口に向かって歩いてきたのだ。

ひとりは「おばあちゃん」という年頃で、もうひとりはその娘、という感じであった。

おばあちゃんは杖をつきながらゆっくり歩き、娘らしき人がそれを見守っている。

良くある風景がなぜ私の目を引いたのかというと、娘と思しき人物がおばあちゃんを叱責していたからである。

ずっと見ていた訳ではないので、詳しいことはわからない。

どうやら上手く歩けないことに、苛立っている感じだ。

どうしてそうなるの、そうじゃないでしょ、とまくし立てている。

おばあちゃんは、無言であった。

買い物を終えて店を出ると、まだそのふたりは入り口のところにいたのだ。

おばあちゃんは、植え込みに腰掛けていた。

娘らしき人はそれを、少し離れたところで見ている。

ふたりとも無言だ。

おばあちゃんは、俯いている。

元気に歩いていた頃も、あっただろう。

老いはそれを、困難にしていく。

誰のせいでもない。

そして、どうにもなりはしない。

そのジレンマは、本人に一番あるのではないだろうか。

そして「家族」という距離感が、娘の忍耐の限界を超えさえる。

本当はあんなこと、言いたくはないはずだ。

介護に疲れているのかもしれない。

他にも大変なことを抱えているのかもしれない。

どちらにも、その辛さがにじみ出ているようであった。胸が締め付けられた。

おばあちゃんの、老人には不釣合いの履き古したスニーカーが、悲しかった。