買い物に行った時のことだ。
店に入ろうと思ったら、女性の二人連れがやはり入り口に向かって歩いてきたのだ。
ひとりは「おばあちゃん」という年頃で、もうひとりはその娘、という感じであった。
おばあちゃんは杖をつきながらゆっくり歩き、娘らしき人がそれを見守っている。
良くある風景がなぜ私の目を引いたのかというと、娘と思しき人物がおばあちゃんを叱責していたからである。
ずっと見ていた訳ではないので、詳しいことはわからない。
どうやら上手く歩けないことに、苛立っている感じだ。
どうしてそうなるの、そうじゃないでしょ、とまくし立てている。
おばあちゃんは、無言であった。
買い物を終えて店を出ると、まだそのふたりは入り口のところにいたのだ。
おばあちゃんは、植え込みに腰掛けていた。
娘らしき人はそれを、少し離れたところで見ている。
ふたりとも無言だ。
おばあちゃんは、俯いている。
元気に歩いていた頃も、あっただろう。
老いはそれを、困難にしていく。
誰のせいでもない。
そして、どうにもなりはしない。
そのジレンマは、本人に一番あるのではないだろうか。
そして「家族」という距離感が、娘の忍耐の限界を超えさえる。
本当はあんなこと、言いたくはないはずだ。
介護に疲れているのかもしれない。
他にも大変なことを抱えているのかもしれない。
どちらにも、その辛さがにじみ出ているようであった。胸が締め付けられた。
おばあちゃんの、老人には不釣合いの履き古したスニーカーが、悲しかった。