人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

専業主婦の重大なアクシデント・続き

そして娘ぶー子が帰ってきた。夜、11時頃である。私は相変わらず、座り込んで庭を見ていた。

「・・・ぶー子に言った方がいいかなぁ・・・。」ダンナが弱々しく言う。

脱走したミは、ぶー子が一番可愛がっている猫ある。

できればぶー子が帰る前に捕まえたかったが、ヤバいことになってきたぞ。

ダンナが階段を上り、ぶー子の部屋をノックする音が聞こえる。

聞き取れなかったが、ぶー子は早口で何か言い、やがてドドドと音を立てて階段を駆け抜け、外に出て行った。

「ミ、ミ、ミ!!」パンパンパンッと手を叩く音が聞こえてきた。いつもミを呼ぶ時の合図である。

「ミ!ミ!」何度も繰り返す。

ミもぶー子に良く懐いていたのだ。こんな風に大きな声で呼んでもらえるのは有難いが、もうダンナが散々探した後である。

ダンナは姉妹猫のラを連れ出して、鳴き声を聞かせて歩き回ったのだ。そう簡単には見つかるまい。

ダンナもぶー子の後を追って出る。私は庭を見ている。ぶー子のミを呼ぶ声が聞こえる。

ふと気づいたのだが、ぶー子の声は、全然動いていない。もしかして、ミはそこにいるのか??

家を出ると、ぶー子が「シーッ」と人差し指を立ててこっちを見た。

ここにいたと。

しかし近づいたら逃げてしまったらしい。

ご近所さんちの庭に入ってしまったが、その家の車はなく、家は真っ暗だ。

そっとお邪魔したが、暗い上に物が多くて何も見えない。

とにかくミはひどく警戒しているようだから、私は家に戻って「我が家の物音」を出す役に回った。

テレビをつけ、網戸を引っかいたり、ラを鳴かせたりする。

そのまま動きがないので、また家を出てみる。しかしこちらには、大きな動きがあったようだ。

ミは斜め向かいの「とよだあべ家」の庭に回ったらしい。

庭に出入りできるルートは2ヶ所しかなく、囲っているフェンスが猫には抜けられないことは、エルを見て分かっていた。これは両側から追い詰めれば、大きなチャンスである。

「とよだあべ」さんに事情を話し、庭に入れてもらう。

こっちからは私が、向こうからはぶー子が。

追えば逃げるのだ。そーっと、そーっと、ゆっくりゆっくり。

「ミ、ミ、ミ。」

暗い向こう側から、ぶー子の声が近づいてくる。おっ、ミ、発見。

ちょうど私とぶー子の真ん中あたりでうずくまっていた。

それにしても綺麗な庭だな(笑)

ウチもいつ何時、誰が入るか分からんから、もうちょっと片付けないとである。

ここでミを無事、捕まえることができたのだった。

まるでPKのように、ミがどっちに走り抜けても捕まえられるよう、一点に集中した。

しかしミは暴れることもなく、あっさりとぶー子の腕の中に入ったのである。

こんなに早く、戻ってくるとは思わなかったのだ。

ミのいない明日からの生活を思うと非常に気が重かったが、本当に良かった。

バンドや合唱や酒や映画や、そういった日常を楽しめるのも、家族がみんな元気で揃っているからなのである。

「変わらぬ日常」に感謝することを忘れないようにしたい。