「もう、名前どーすんの!?」
ここ2、3日繰り返されている質問、というか催促である。
ベックか大五郎か。
宙ぶらりんなままなので、このところ「チッタンコ」と呼んでいる。
小さいからチッタンコである。
「コイツ、深海魚みたいな顔だ~~!!」
テレビで深海魚が出てくると、娘ぶー子がまた変なことを言い出した。
変だが、何が変って、何となく頷けるところが変なのだ。
確かに深海魚みたいな顔である。
「ギョッタンコ。」
「チッタンギョ。」
真面目に考えなくてはならない時が来ているのに、しょうもない名前ばかりが浮かんでは消える。
「ぶー子、ちょっと聞いて。」
晩御飯を食べていると、ダンナが口を開いた。
「俺は正直、どっちの名前でもいいと思ってるけど、ラとミの名前はぶー子がつけたでしょ。」
エルと名付けたのはダンナである。
「だから今回はお母さんに・・・。」
意外とぶー子はあっさり了承した。
「じゃあベックね。」
しかし、そう言われると迷いが出てくるのが私である。
大五郎も、決して悪いと思っているわけではないのだ。
むしろ、良く雰囲気を掴んでいる愛嬌のある名前だと思う。
「じゃあ、次に猫が来たらその時はベックにするから、今回は大五郎にしよう。」
何だかあまのじゃくだが、決心できたんだから良しとしてくれ。
しかしちょっと言うと、実際に「ベック」と呼んでみたら「ベク」か「ベッ」になってしまい、あまり呼びやすくなかった事もある。
やっと名前が決まった。
しかし慣れてないのでついチッタンと呼んでしまう。
どうでもいい時は気まぐれで「ダイ」と呼んだりしていたのに、どこまでもひねくれているぽ子であった。
名前が決まるとぶー子が、「ダイちゃん、去勢手術するの?」と聞いた。
しますします、エルが妊娠しちゃうからね。
「ベックだらけになっちゃうよ。」とダンナが笑った。
「そしたら『大ベック郎』「中ベック郎』『小ベック郎』に・・・。」と私。
「いやいや、『中五郎』『小五郎』でしょう。」とぶー子。
エルが出産した暁には、また名付け問題が勃発しそうである。