人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

勝負、挑戦、野望、そしてその結果。

晩ご飯の献立を考えるのも、一応仕事である。

思いつきで食べたいものを作るのならそれは仕事ではないが、今ある食材を無駄にしないよう、そしてそこにうまく特売品を加えて安くあげるよう、頭を使わなくてはならないのである。まぁ良く腐らせるが。

食事を安くあげたいがために、私は良く特売品を買い込んでしまう。

生ものを中心に消費していくために、どうしても缶詰や瓶詰め、調味料が残りやすい。

その結果、収納スペースがパンパンにあふれ返っているのだ。

今日の仕事は、これを減らすことである。

中に大きなトマトペーストの缶があった。

大きいのでこれひとつなくなれば、ちょっとしたスペースができるはずである。

しかし、トマトペーストなど滅多に使わないので、どうしたらいいのかが分からない。

一度に大量消費できるメニューはないか??

こういう時は、ネットで検索である。

・・・冷や汗。

どのレシピを見ても、一度の消費量はせいぜい大さじ2、3杯であった。

収納スペースを圧迫していた缶は、直径10センチ、縦11センチ、グラムにして785グラムもあるのだ。そのようにチマチマ使ってはいられない。

トマトペースト。

トマトを大量に使う料理はないか。

思いついたのは、ミートソースとカレーだけであった。

こうなったらカレーにしてしまおう。単純にミートソースよりもカレーが好きだからだ。

ペーストがうまく馴染まない事も想定して、ひき肉を使うキーマカレーを作ることにした。

もちろんトマトペーストを大量に使うカレーのレシピなど見つけられなかったので、あちこちのレシピからいいとこ取りをして、オリジナルで勝負する。

勝負だ。

私はレシピを見ないとまともな料理が作れないのである。もはや賭けと言ってもいい。

そのオリジナルレシピを公開する。

絶対に作らないほうがいいレシピだ。

絶対に作らないほうがいいレシピになってしまった・・・・・・。

①たっぷりの油を引き、クミンシード大さじ3程度、ローリエ小3枚、シナモンスティック1本を弱火で炒める。

②玉ねぎ2個分、しょうが大2かけ、にんにく3かけのみじん切りを足して炒める。

③香りが出たら火を強めて肉を足し、粉末のスパイスを加える。(ターメリック、クミン、コリアンダー、カルダモン、カイエンペッパー各小さじ2、クローブ、ナツメグ、ガラムマサラ、カレー粉各小さじ1)

④トマトペーストと赤ワインを足す。赤ワインは水分をみて適当に。

⑤ヨーグルトを足して煮込む。

⑥塩こしょうウスターソースで調味。

結果。

①→香りのメインと書かれていたクミンがあまりにも古くて、全然香りが出なかった。瓶を見たら、賞味期限は2005年であった・・・。

②→はいわゆる生スパイスだ、こちらは十分にいい香り。

③→こっちのスパイスも、半数以上が5年以上前のものである。不安。矛盾していると思われたカレー粉とガラムマサラが救いである。

④→ここからが決定的な失敗である。トマトペーストはペーストなのだ、水分は極限まで減らされ、粘土状であった。馴染まないなんてものではない。そのためにワインをかなり入れる羽目に。これは本当にカレーになるのか。不安。

⑤→赤ワインを入れ過ぎるのも不安だったので、すぐにヨーグルトを足す。400gのパック丸々1個。しかしヨーグルトにしてもボテボテのものなのだ、期待したほど水分は望めなかった。

物凄い濃度である。

沸騰し始めるとボコッ・・・、ボコッ・・・、といって、溶岩のように表面に穴が開く。時々ポーンとそれは弾けるように飛び出した。魔女の実験みたいである。

そのうえ水分が少ないので焦げやすく、放置できないので煮込み時間はあまりとれなかった。

もういい、最後の調味だ。そのためには現状を知らねばならぬ。

ひとくち。

・・・・・・・EE:AE4E6EE:AE4E6

トマト過ぎて、これではカレーかミートソースか分からない。どっちともとれる不思議な味だEE:AEB64

考えてみればトマトペーストとは、トマトジュースを極限まで煮詰めて水分を飛ばしたものなのである。濃縮トマトだ。ほんのちょっとのペーストでも驚愕のトマト味が詰まっているシロモノなのである。だからどのレシピも大さじ2とか3程度だったのだろう。

そこを785gも一気に使ったのだ。ちょっとやそっとのトマトではない。超トマトである。

とんでもないものを作ってしまった・・・。

よく映画やドラマで、博士や教授なんかが高性能のロボットや天才児を作り上げて大変なことになる展開があるが、まさにそれだ。

いや、真逆か。

料理もできない女が身の丈に合わない野望を抱いたために、とんでもない失敗作が出来上がってしまったのである。

大鍋にいっぱいだ。

あの濃度である、倍ぐらいにのばせそうな事を考えれば、その倍量とも言える。

もうホント、料理はレシピに忠実に作るようにしたい。

というか、得体の知れないものを買ってこないようにしたい。