今日も暑い。
夏なのだ、毎日暑い。不快だが、慣れた。というか、観念した。
日中、リビングには私ひとりである。エアコンは極限まで耐えてからだ。
首にひんやりマフラーを巻いて、扇風機を回す。
意外とこれで、しのげるものである。
去年はこれで、約22%の節電を達成した。
しかし、ベランダだけはどうにもならない。洗濯物の出し入れは、地獄である。
朝も暑いが、夕方も暑い。
洗濯物を取り込む時は、シワにならないようにいちいちたたんで入れているのだが、その時エアコンの室外機が静かに音を立てていることに気がついた。
娘ぶー子である。
もう時間は昼を過ぎて夕方に近かったが、彼女はリビングに全く顔を出すことなく、気持ちよくひとりで涼んでいるのだ。否、涼み続けているのだ。
イモヅル式に、貸した金を返してもらっていないことを思い出し、洗濯物を取り込むとぶー子の部屋に直行した。す、涼しい。
「ちょっとアンタ、私は今!洗濯物を!!このクソ暑いのに洗濯物をだよ、その中にはアンタの仕事場の制服2回分もあって、それをいちいちきれいにたたんで入れてたのにね、私はね、朝も昼も汗ダラッダラ流してひんやりマフラーして節電に勤しんでいるのにだね!!」
支離滅裂だが、言いたいことは伝わったようで、ぶー子は慌ててエアコンの電源を切った。
第2章。
「それからねぇ、アンタ、もう給料入ってるでしょ!?ホントにまったくいつも、」
ここまで言っただけですぐに分かったらしく「ああ!!忘れてた、明日お金下ろしてくる、すまん。」と即答した。
ところでこの「すまん」のようにぶー子の言語は最近お侍さん化しており、自分のことを「ワシ」などと言うようになった。
女度はどんどん下がっていくが、嫁に行く日は来るのだろうか。
そうだったッ!
第3章。
「そもそもアンタ、やりたい事があるとか何とか言って学校を辞めたけど、一体なにをやってんのよ!?もっと将来のことを考えなさい!!一生自分が生きていけるだけの仕事を見つけないと、(嫁に行けるとは限らないんだぜ、ぶー子。)歳とってからじゃもう遅いんだからね!!」
そろそろこの辺になると、面倒臭そうな表情になってくる。
「アンタ、今ばっかり見てないで、もうちょっと将来のことを考え・・・、」
「考えてるよEE:AE471」
「えっ・・・?どうすんの??」
「うん、ワシ、
女社長になるから。」
ガーン。
女社長。
小学生の「しょうらいのゆめ」レベルである。
「あのー、黙ってても社長にはなれないと思いますが。」
「あ?だって今、金ないもん。しゃーないじゃん。」
しゃーなくてもできることがあるはずである。
金がないからって、しゃーなさ過ぎである。
夢があるなら、応援してやりたいのが親だ。
しかし、夢があまりにも漠然としているために、これではこちらも「じゃ、頑張って。」ぐらいしかできないスケールである。
5年後のぶー子はどうなっているだろうか。
専門学校の体験学習ぐらい行け、と言ってみたが、こちらは5年前と変わらない。
ニートは何とか脱したが、次はパラサイトか。
5年後のぶー子はどうなっているだろうか。