私は小心者だ。
ビビリで人の顔色ばかりうかがって、いつもヘコヘコしている。
しかしだ、例外がある。
強気で冷徹にならなくてはならない場面があるのである。
対セールス戦だ。
とにかく小心者なので、顔を見てしまったらもうヘラヘラしてしまう。
そこで私は学んだ。
無駄な戦いに時間を費やさずに済むように、できるだけ速やかにお引き取りいただく術を。
「絶対にドアを開けてはいけない」、鉄則である。
今の家のインターフォンにはモニターがついているから、怪しい人はより分かりやすくなった。
首からナントカ証みたいなのを提げて書類を抱えている人は、非常に危険度が高い。
敵の方も「ドアを開けさせればもう落ちる」という勢いで、あの手この手で誘い込んでくる。
「商品の説明だけさせてください」なんていうのは、全然可愛い方だ。興味がないというと意外とあっさり引っ込んでくれる場合が多い。
この頃は「挨拶にきました」と「工事の説明に参りました」が強い。
その入り方だと、ついドアを開けてしまいそうになるのが落とし穴である。
しかし子ヤギちゃんよ、開けてはならぬ。
「どちらさまですか?」「何の工事ですか?」と聞くと、モゴモゴ言って結局何がしかのセールスである事を白状する。
どこどこ社の誰々と申します、と名乗る人ほど、外壁の工事をしたがる事が分かってきた。
もう誰も信じてはいけない、基本全員セールスだと思った方が間違いは少ないのである。
先日の訪問者はかなりのツワモノであった。
どこどこ社の誰々と申します、と言って黙っているので、私はできるだけ冷たく「何ですか」と返した。
すると、やはり工事の説明をしたいのでお願いします、と言う。
何の工事ですかと聞くと、それを説明しますのでと言って引かないのである。
めんどうなので「今忙しいので」と言うと、「ではまた改めてお伺いします。」と帰っていった。
またお伺いします。
本当に、また来た。
また来て同じように「工事の説明を」と言うので、今度は「どこでやるんですか?」と聞くと初めてたじろいで、「いえその、どこと言うか、この先で、私どもが今外壁の工事をしている現場がありまして、近くなのでいかがかと思いまして・・・。」と、正体を現した。
そこからは「我が家に外壁の工事の予定はない」と何度も繰り返すのだが、無料でできる範囲もあってだとか、説明をするだけなので、だとか言って向こうも負けずに返してくる。
「予定もないのに聞いても仕方がないので!!」と言うとやっと首をかしげて諦めてくれたが、あれが最近の最強である。
まぁ彼らも商売だ、しつこくならなくてはいけないのだろうが、この程度ならまだ腹は立たない。むしろ「あんた、よく頑張った」ぐらいなすがすがしい気持ちだ。
しかし腹が立つのは新聞の勧誘だ。
誤解のないように、もちろん全てがそうではない。たまにいるのだ、腹が立つのが。
出るなり「お宅、何新聞とってます??」とくる。
なんでそんな事を答えにゃならんのだ、誰とも分からん奴に。
「どちらさまですか?」と聞くと、××新聞ですが、というが、それは我が家でとってる新聞である。
この場合、こちらの新聞事情は言わずに「新聞を変える気はないので」で通すが、どういう者がどういう目的で、という事を言わずにこちらの情報を引き出そうなどと、失礼な話だ。
もちろんこんな人ばかりではない。
中にはきちんと頭をさげて、「それではパンフレットだけお入れしますので、よろしかったらご覧ください。」と帰る人もいる。そういう時は私もパンフレットを見るようにする。
しかし、ほとんどのケースが必要ないものだ。そして必要なら、自分から出向いていく。
だから、できるだけ最短で気持ち良くお帰りいただきたいのである、私としては。
ところで、安心してニコニコお迎えしている人が、ひとりだけいる。
新聞の集金に来るお兄さんだ。
今日は初めて見る顔だったが、ニコニコと契約を6ヶ月更新したら、「気持ちいいですね」と洗剤6個、液体洗剤2個、トイレットペーパー6ロール置いていってくれた。
ムフフ、気持ちいいですねEE:AEACD
しかし、セールスマンとの攻防はまだまだ続くのだろう。
私だって好き好んで無愛想にしている訳じゃないのだ。
仲良くするからしつこくしないでちょうだい。