人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

緊張とリラックスの狭間で

飲まなかったのに、眠い。

たいがい二日も酒を抜けば元気になるはずなのに、今日も座るなり眠い。

寝なかったのはペットボトルの回収日だったことと布団を干して洗濯をしたからで、座ったらひとたまりもない。

酒を抜いて寝てるのにこんなに眠いという自分自身の詐欺行為に腹が立っていたが、原因がわかった。

私は毎夜同じことを繰り返し、朝になるとそれを忘れていただけである。

この頃はエルと寝ている。

先住姉やんたちにはいじめられ、後輩大五郎にはおもちゃにされ、エルはプライベートスペースを心から欲していた。

ダンナもそれが分かったのでエルを私の寝室に連れて行くように言ってくれたのだが、ダイのように暴れたりしないエルにも落とし穴があったのだ。

私を悩ませていた不眠、正確には入眠困難と言うらしいが、これは電気をつけて寝ることでほぼ解決した。

もう体質的な夜型なのか、睡眠へのプレッシャーがなくなるからなのか、はたまたその両方かもしれない。

とにかく、寝入りに何度も目が覚めることはほとんどなくなった。

なので昨夜も安心して眠りに向かった。

結構涼しかったので、窓は開けたまま扇風機をかけて目を閉じた。

「電気を消す」ということは「寝ましょう」というスイッチにもなるのだろうが、そのスイッチを入れないのだから寝なくてもいいのである。

ホントにいいんすか!?

じゃあ私はステーキの事でも考えてみますよ。

などと思いつつ、だいたいこんな感じで呆気なく眠りに入ることができる。

昨日まで私の記憶はここまでで終わっていた。

しかし昨日知ったが、続きがあったのだ。

ドカンEE:AE4F4

うわっEE:AE5B1

まだ完全に眠りきっていない、緊張とリラックスの狭間のニュートラルな状態である。

必要以上に驚いて目が覚める。

エルがタンスに飛び乗ったのである。

タンスに乗るために彼女は、ケージを踏み台にしていた。

からっぽのケージは単なるプラスティックの打楽器と化し、バネをきかせて蹴り飛ばしたために大きな音を立てたのだ。

エルはブラインドに頭を突っ込み、タンスの上から窓の下を眺め始めた。

こんなに暗いのに、何か見えるのかのEE:AE4E6

どうてもいいが、「行った」ということは「帰ってくる」という事である。

つまりまたいつかあのリズムが鳴る事になるだろうが、それがいつかは分からないのである。

ギヤが「ニュートラル」から「緊張」に入る。

それでもそもそも眠りかかっていたのだ、私はすぐにウトウトし始めたが、案の定いいところでエルはお帰りになった。

しかも帰りはケージを経由せずに床にダイレクトに下りたために、トスンと気の抜けた音であった。

トスンで起こされたのかよEE:AEB64

最初のドカンがなければ、気付かずに寝てただろう音である。

エルはそのままベッドには上がってこなかった。

だいたいエアコンをかければベッドに上がり、、かけなければ暑いからか床で寝る。

そのまま寝るだろうと思って安心してギアを再びニュートラルに入れると、次はクシャッである。

エアコンはついてないが、ベッドに来たのだった。

シーツの下には大五郎のおしっこの浸透を防ぐために、災害時に包まって体を温める「保温シート」が敷いてあった。

災害時に人を暖めるために生まれたのに猫のおしっこ防ぎにさせられたシートの屈辱を思うと心が痛むが、何でも良かったのだ、ビニールでもレジャーシートでも。

単に大きくて安かったからこれにしたのだが、シーツの上から踏みつけられるたびにつっぱってビリビリに破け、無残な晩年を迎えている。

しかも大五郎のおしっこを受けるという任務すら、まだ果たしていない。

それでもシーツを洗うたびに、パズルのように、破れたシートをつなぎ合わせてまた敷いた。

自分でもなんでまだそんな事をするのか良く分からないが、これも洗濯の呪いと同様、誰かが私にかけた呪いなのかもしれない。

一生私は洗濯物を干す前にたたみ、破れても必要なくなっても保温シートをシーツの下に敷くのだ。

ところでこのシートは薄いアルミホイルのようなもので、柔らかいベッドの上から踏まれるとクシャクシャと音を立てる。

エルはベッドに飛び乗ったので、着地と同時にそこに「クシャッ」と音がした。

そのままエルはクシャクシャクシャとベッドを横切って、パリパリと壁で爪を研ぎ始めた。

私はとにかく寝たかったので、極力エル(「ごく・カエル」ではなく「きょくりょく・エル」だ)には気づかないように頑張っていた。

ところが壁で爪を研がれたらたまらない。

「エル、だめぇ・・・。」

言わなくても良かったぐらいの声しか出なかったが、そのせいですっかり目が覚めてしまった。

エルは次にベッド側の窓に飛び乗り、外を眺め始めた。

つまり「行った」ので、いつか「帰ってくる」のである。

クシャという音を立てて。

最後のクシャを聞いたときには、少々いらだっていたので体が熱くなっていた。

すんなり寝たかったので、私は窓を閉めてエアコンのスイッチを入れた。

ああそうだった、そういえば毎晩夜中に暑くて目が覚めて、窓を閉めてエアコンをつけていたな。

私は昨夜、色んなことを思い出したのだ。

これは初めてじゃない。昨日もおとといもあった事である。

そして朝方、もうひとつ思い出した事がある。

毎朝方、寒くて目が覚めるのだ。

今夜は飲んでから寝るかもしれない。