人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

ナチュラル ハ ・・・ イ ・・・  ガクッ。

昨日だってちゃんと早くベッドに行ったのだ。

ところが寝不足のはずだったのに、一向に眠くならない。

すごい洗脳効果だ。

いい加減寝たかったから、眠くはないが本を閉じ、電気を消した。

エルがタンスの上で寝ていた。

昨日は珍しく部屋に入るなりすぐに寝てしまったのだ。

いつもならひと遊びしてから寝るのだが、よほど疲れていたのだろう。

私も寝る。

おやすみ。

・・・・・・・・。

ずっとハイテンションを保っていたが、どうやらそれは頭の中だけのことであり、ひとたび目を閉じて体を横たえるとあっという間に睡魔に襲われた。

「!!」

ビックリしたっ、勘弁してよ!!

音がしたのだ。せっかく寝かかっていたのに、音がして目が覚めてしまったのだ。

私を目覚めさせたその音はなんと、エルの寝返りの音であった。

音にもなってないような音だ。

こんなみみっちい音で目が覚めてしまった事にまた驚きだ。

どうやら私は眠りにつく前に、恐ろしく耳が発達する時間があるようだ。

酒を控えてからというもの、必ずと言っていいほど寝入りばなに一度目が覚める。

ある時はどこかのドアを閉める音、またある時は足音・・・。

そのたび私は2度目の音に警戒して眠れなくなるので、いちいち「お静かに願います」とメールを送る。

翌朝、「そんなに音、立ててない!!」と反発されたりもしたが、エルの寝返りで目が覚めるのだ。

本当にみんなほとんど音を立ててないのかもしれない。

さて昨日はそれで目が覚めてしまったが、やはり疲れていたのかすぐに睡魔の第二波が来た。

私はそれに身をゆだねる。

ところが今度は、またいい所でエルが鳴いた。本当に珍しいことだ。

タンスの上で寝ることなど滅多にないから不安になったのか。

私はエルが鳴くたびに「エルぅ」「エルぅ」とひとつひとつ返事をした。眠い。

そのうち大人しくなり、私もまた眠りに引きずり込まれる。

次はエルがベッドを横切った。

ハイハイ、窓に登りたいんですね。

エルはまだチビだから届かない。私は大きなクッションをかましてやる。

では頑張って。

しかし昨日は私の方も何度でも眠れそうだった。

普段ならここまで眠り逃すともうダメだ。

ね・・・れ・・・る・・・。

ゴソッ・・・。

「!!」今度は何だ!?

あぁ、エル・・・。

クッションが柔らかすぎて、クッションごと倒れたのだ。

見たかった・・・フフ・・・。

クッションをしっかりと立て直すと、エルはすぐに窓に飛んだ。

やっと寝れる。フー。

何考えてたんだっけ??そうだ、マンションだ、マンション。台場のマンション。

私は眠れない時に、いつも台場のマンションの事を考える。

いつか金持ちになったら住みたい理想だ。

窓からは台場の観覧車が見える。

インテリアはモノトーンで統一する。

ワインクーラーを買おう。今日、通販のカタログで見つけたのだ。あれがいい。

テレビは置かない。

ベランダのデッキチェア。

デッキチェア??デッキチェアって何だ??

・・・・・・・。

・・・・・・・。

あと1歩という所でエルが窓から降りてきた。

高さがあるからドスンと。

(泣)

ポジティブシンキング、ポジティブシンキング!!

大丈夫、まだ寝れる、私は生まれ変わったのだ。

マンション、マンション。

もう見飽きてきたな。これ以上家具置きたくない。じゃ、ここで飲むか。

私はマンションに人を呼んで飲む事にした。誰にするか・・・。

「コ。」

!!(怒)

今度は何なんだッ!!

ベッドサイドにエルがいた。

でもエルはおとなしくじっとしている。何の音だ?

これだ。

ブラインドのヒモ。

エルの体に触れて、先っちょの小さなプラスチックの部分がベッドサイドに当たったのだ。コ。

コかよ(怒)

寝る、寝るッ。

台場行こ、台場ッ。

・・・・・・。

「コ。」

・・・・・・。

「コ。」

何!?

何で!?

どうやらエルのしっぽに絡まってるようで、エルが何かに反応してしっぽを動かすたびに小さく「コ」と鳴るのだ。

「もう寝ようよ~・・・。」

人間、猫に哀願。

一体何時なんだろう?

1時間とはいかないまでも、30分は軽く過ぎているはずだ。

もうエルはダンナのところに連れて行くか。

やだ~~!!

せっかく連れてきたのに!!

ドアんトコで「連れてって~!!」って2本足で立ってたのに!!

結局エルはその後しばらくウロウロしてから、やっと顔の横で丸くなった。

手こずったな。

寝かすの、早すぎたか。

寝不足、確定である。

しかしテンションはハイ、私はまだまだ頑張るのであった。