人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

ヌケヌケ

たまの休日ぐらいはいいですよ、お先にどうぞ。そうすればきっとついて行きますからね。

エルは、とにかく2階の寝室で寝たいのだ。リビングのドアが開くのをいつでも待っている。

つまり、先にこのドアを開けた方に、添い寝権が発生するのである。

私はほとんど毎日寝ているのだ。こんなに酔ってしまえば、オバケも怖くないし。

「えぅ~~、今日はピャピャとねんねちようね~EE:AE478」かなんか言って、先に姿を消したダンナであった。

ひひひEE:AEB80

と、思うでしょ。

どうぞ、しばらくは一緒に布団に入るなり腕枕で撫でるなりしてればいい。

ダンナはすぐに寝てしまう。

ホントに、他愛もなく寝てしまう。

つまり、その後のことなど感知できないのである。

どうせ分からないのなら、どうなっても良かろう。

15分ぐらいがベストタイムだろうか。あまり時間をかけると、エル自身も爆睡してしまうのでこの見極めが重要だ。

私も寝る支度をして、2階へ上がる。わざと大きな足音を立てて。

わざと大きな音で鼻をすすり、

わざと大きな音で咳をし、

わざわざ2階のトイレに入り、

大きな音でそのドアを開け閉めし、

コップに入れた氷の音をカラカラ鳴らしながら寝室に行く。

すると、なんということでしょう。

あっちの方から、猫の飛び跳ねる音がするではありませんかEE:AE482

ダンナの部屋のドアの前で、エルがノブに向かって飛んでいるのだ。

開けてくれと。

みゃみゃに会いてゃいと。

あらあらあらあら、仕方がないわねぇ、私はドアを開ける。

するとエルは、弾丸のように飛び出してくるのだ。ボムンと。

こんなにも愛され、求められることは、人間同士であるだろうか。

私は、もしエルが人間だったらと想像してみる。

私に会おうと、開けられないドアを必死で開けようとしている。ちょっと頭が弱いのね、ドアが開けられないの。

そこへ私が登場するのだ。

すると飛び出してくるのである。私目がけて。

こういうのを理性というのか分からないが、普通はまず向かい合って「ああEE:AE595」とか、なんならハグでもするか、とにかく挨拶や儀式的なものから始まるのだろうが、エルは猪突猛進、会いたい気持ちが「突進」させるのである。

そしていつも、その勢いで私の足元を通り過ぎ、寝室まで駆け抜けていく。

人間だったら、これどうなんだろうEE:AEB64お~い、私はここですよ~。

エルはたいがいポカンとして、寝室の入り口かベッドの下あたりで振り向いて待っている。

まぁ考えたところで、エルは猫なのだ。

部屋を出たいと思ったらドアが開いた、その結果ヒャッホーと飛び出して来ただけのことである。

もちろん、引き金は私だ。ここ重要。私が言いたいのは、ここなのだ。

なぜあのように物凄い勢いで飛び出してくるのか。それは、あのスピードに愛が比例しているからなのである。

エルが、猫だからヌケヌケと言えることだ。

やはりエルは猫でいい。

そしてこの晩も、何も知らず朝までひとりダンナはグッスリ寝るのであった。