腹ではない。
胸が苦しいのだ、サンタイザベル・ぽ子、41歳。
「ぽ子さんていくつなんですか?」
昨日の事である。
休日だったので夕方から飲みながらゲームをやっていた。
もう飲み過ぎて気持ち悪いので、そろそろ寝ようかと思っていた頃のことである。
この恐ろしい質問をしたのは、このネトゲ上で知り合い、今や同じグループの団長として活躍している通称・ダッキーである。
ダッキーはネトゲで初めて友達になった人である。
なので結構長い付き合いになる方だろう。
そもそもみんなあまりプライベートな部分を詮索するような事はなかったが、それでも「本当のぽ子像」が見えたりしないように、私はずいぶん気を使ってきた。
会社の仲間は全員20代である。
隠す必要のない彼らは普通に自分の歳を言っていたが、そうもいかない人間もいるのだよEE:AEB64
騙すようなことはしたくないが、今さら「私は41歳です。18歳の子供がいます」などとカミングアウトする事は、私を「若い女性」として扱ってきたら彼らに恥をかかすことになりかねないように思えるのだ。
真実を知れば、「しまった!俺はあんなことを言ってしまった!」という事態になるのではないか?
もちろん、純粋に自分が知られたくない気持ちもある。
これまで何かと世話を焼いてくれた彼らが、手の平を返したように寄り付かなくなるのはやはり辛い。
いずれにしろ「トップシークレット」なのである、私の年齢は。
「ぽ子さんていくつなんですか?」
その質問は、本当に唐突であった。
そんな流れでもなかったのに、突然そう切り出してきたのだ。
嫌な予感。
彼は本気で知りたいのだ。
なぜだ?
何かどっかで洩れたか?
実はこのチャットの裏で、私は会社の仲間のさとちゃんと個人チャット、つまりダッキーに分からないように並行して喋っていた。
「なに!?」
「バレた!?」
「まぁなんて失礼な質問を!!」
とっさにそう返した。
冗談のようで本気だぜ、ダッキー。
さっさとこの話、引っ込めた方がいいぜ。
「ブログが見つかった!?」裏からさとちゃんが言う。
うん、実は私もその辺を心配していた。
ゲームのキャラとブログで使っている名前は一緒なのだ。
「あ、いや、多分偶然だから・・・。」彼は答える。
な!?何その含みのある言い方!!
あんた何か知ってるね!?
「きっと偶然だろうから・・・。」
彼はもう一度繰り返したので、ますます不安になった。何、その繰り返し効果EE:AEB64
「mixiの足跡に、☆☆高校卒業××、っていうのがあったから・・・、偶然だよね、気にしないで。」
☆☆高校。
××。
それは娘ぶー子の卒業した高校で、続く名前はぶー子のフルネームであった。
彼は私達が☆☆高校のある町に住んでいることを知っている。そして私の苗字も。
血の気が引いたとはこの事よ。
実はダッキーのmixiを、さとちゃんから聞いてあったのだ。
私がアクセスすると「ぽ子」で足跡がついてしまい(もう何のHNもぽ子である。ひねれやEE:AE4E6)ブログにいざなってしまうようになっているので、ぶー子のIDで入ってもらったのだ。
そこには子供を抱いたギャル男がいたEE:AE46C
そりゃ驚いたが、彼が結婚しているという話はあった。
ただ、あんまり信じていなかったのだ。
冗談めいたことばかり言ってるから、「またまたぁ」程度であった。
しかも、人物像に、予想とは大きなズレが(笑)
もっとオタクっぽい純朴な人かと思っていた。
卑怯だな~、ぽ子。
あんたの素性が知れたら、ダッキーはもっと驚くぞ。
胸が痛んだが、とっさに「あ、それは妹です!!」と答えていた。
これまで決定打を言わないようにノラリクラリと曖昧に濁してきたが、ついに嘘をついてしまった。
ひとつ嘘をつくと、辻褄を合わせるためにもっともっと嘘をつかなくてはならなくなる。
苦しいEE:AE473
ネトゲ界の祭が終わったら、本当のことを話して彼らとは決別するつもりである。
「ぽ子さんていくつなんですか?」
「団員で一番お姉さんです☆」
しかしこれは嘘ではない。