フライパンで焼かれた子供の話を読んだ事はあるが、この話は虐待ではない。
「名誉の殺人」と呼ばれ、罰されることすらない殺人。
驚く事にこの風習は今でも続いていて、わかっているだけでも年に6千人の女性が家族の手で殺されているとの事だ。
著者スアドの住んでいたシスヨルダンの小さな村は、男尊女卑が根強く残っており、女として生まれたからには一生奴隷である。
子供のうちは父親に殴られない日はなかっただろうという程に虐げられ、結婚すれば今度は夫に殴られる。
使命は「男の子を産む事」だけであり、その存在は家畜以下とされている。
著者スアドはもっと自分には姉妹がいたはずだと後に思い出すが、あまりに過酷な人生がその悲惨な運命を記憶の彼方に葬っていた。
自由など何ひとつない。
男性と浮いた話を出せば「売女」のレッテルを貼られ、家族が恥をかく事になるので速やかに殺される。
中には単なる噂に過ぎなかったものもあるらしいが、事実かどうかは問題ではないのだ。
大切なのは家の体面である。
彼女は義兄に焼き殺されるところだったのだ。
外に助けを求めたので一応病院には運ばれたが、「売女」は死を待つしかなかった。
そんな時たまたま中東の福祉団体にいたジャックリーヌが、スアドの存在を知った。
彼女を救い出すには彼女の両親の了解が必要なのだが・・・。
衝撃的な話であった。
遠い昔の事ではないのだ。
今もなおその風習の下で苦しむ女性はたくさんいる。
こんな時、本当に自分の無力を感じる。
イカの寿司、食ってる場合じゃない。
ぽ子のオススメ度 ★★★★★
生きながら火に焼かれて
スアド
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