「昨日初めて『エコ』ってボタン押してみたのよ~。」
エアコンのリモコンの話である。
仕事をしながら、向かいに座る奥様が言う。
「買ってから一度も押した事なかったんだけど、ついに昨日ね。」
そうなのだ。
コンポやビデオなどの機械類にとどまらず、たかだかエアコンのスイッチですら、訳のわからないものが増えてきた今日この頃である。
「で、どうエコでした??」
「それが、夜中に隣に寝てる娘見たら、汗だくだった(笑)」
もう押す事はないだろう。
うちにも意味の分からないボタンが、エアコンのリモコンにある。
「風ないス」というボタンだ。
意味が分からないから押した事がないが、ダンナ曰く「風が直接当たらないとか、体に優しいんじゃないか?」と。
しかしだ。やはり夜中に暑くなったそうだ。
それにしても「もう無理ッス」のようなこの「ス」とは一体??
「風ない」と「ナイス」を一体化したのではという説が有力だが、余計な遊び心を出したために、ぽ子には肝心な部分が伝わらなかった。
それを聞いていた上司アンガが続ける。
「うちのリモコンには『節約パワー』というのがあります。」
一同爆笑である。
何だか節約するために無駄なパワーを使いそうなボタンである。
「そういえば、ジャジャのところには凄い扇風機があるんだよね。」
奥様がジャジャマキに振る。
その一言で皆、去年のアホな一件を思い出す事になる。
去年ジャジャは扇風機を買った。
それが、エアコンが切れると自動的にスイッチが入る扇風機だと言う。
そりゃすげえ。
「あり得ない。」
「どう感知するんだ?」
「じゃあ仕事に来てる間は扇風機、回りっぱなしじゃないの?」
ジャジャマキは普段から、思い込みが激しくアホな間違いを良くするので、周りから散々突っ込まれた。
「でもだって、扇風機についてた紙に、そう書いてあったもん!!」
ジャジャはこの一点張りである。
「じゃあその紙を写メって送ってよ。」
翌朝、写メが送られてきた。
1年前の事でちゃんとした文面は忘れたが、何てことはない、つまり、「エアコンが切れてもタイマーを入れておけば扇風機がついて涼しいですよ」つまり単なるタイマー付きの扇風機であった。
ジャジャマキの欠点は、人の話に耳を貸さず、言われれば言われるほどムキになってはねつけるところである。
そのせいで、翌日余計に笑いものになったジャジャであった。
もうすぐ夏が終わる。
「エコ」も「風ないス」も「節約パワー」も、来年までお別れだ。
もしかしたら永遠にだが。