月曜日である。
週末にバカ酒飲んだ後の週明けは辛い。
それが会社の仲間と飲んだ後だとなおさらで、足が重い。
みんなの記憶をつかさどる海馬よ(「特命リサーチ200X」で覚えた)、誤作動プリーズだ。
「おはようございます。」
社内に入るには、喫煙所となっている場所の横を通る。もう課長は当たり前のようにそこにいる。
私の海馬も相当狂っているが、おととい飲んだ時、「7月から止める。」と課長(及び山口くん改めGX-7)が言ったことは覚えている。
このように、どんなに酔っても思いがけない所を覚えている事があるから、私と飲んで脱力しきってる者よ、気をつけた方が良いである。
それにしても、ほとんど忘れている側というのは立場が弱い。
別にみんな普通に「おはようございます。」と言ってくれたのだろうが、どうも冷たい気がするのだ。
靴をはき替えながらもおとといの事を思い出してみる。
・・・無理だ、思い出せないものは思い出せない。
比較的、マシだったはずだが。
仕事に入ってやっといつもの雰囲気だと安心した。
まぁ迎え酒だったのだ。1日目よりはマシなはずだ。
これだけ引っぱっておいていうのもアレだが、本当にネタになるようなことはあがってこなかった。
かと言って大人しく飲んでた訳でもないが。
で、アイラブユー、OKですね。
今日は職場にお客さんが来ると聞いていた。
3時の休憩に「あと1時間ぐらいで来ます。」と聞いた。
他のパートさんはみんな帰って、私とアンガとGX-7の3人が残っていた。
おとといの話で盛り上がり、ゲラゲラと声を上げて笑っていたら「お客さんでーす。」と、課長がお客さんと一緒に入って来た。
空気が引き締まる。
課長が部屋の中を案内して回っている。
私たちは無駄なおしゃべりを止めて仕事に集中する。
集中して気付いたのだが、曲が流れていた。
職場ではいつもラジオのNACK5を流しっぱなしにしているが、そこから流れていた。
静まり返って聴こえてきたその曲は、矢沢永吉の「I LOVE YOU、OK」であった。
矢沢の「アイラブユー、OK?」と渋い声の問いかけ。
ネクタイ締めたお客様と課長。
さっきまでバカ話してたのに、手のひら返したように真面目に仕事する3人。
前にも書いたが、私は笑いを堪えるプレッシャーにムチャクチャ弱い。
これは困った事になった。
気をそらそう、そらそうと思うほどに、しょうもない昔の思い出がよみがえる。
昔出席した葬式の事だが、親族は1人ずつ名前を呼ばれ、坊さんの横にお焼香をしにいくようになっていた。
ぽ子の名前が呼ばれた。
立ち上がったぽ子は、まっすぐ進んでいるつもりが足がしびれていてトットット・・・と右に傾いて行き、坊さんの横で倒れてしまった。
ぽ子の恥かきランキングのベスト5に入る出来事だろう。
こういう事をこういう時に思い出してしまうのだ。
苦しい。つらい。
振り向くとお客さんの顔が時任三郎に良く似ていた。
それだけでももはや爆笑ものなのに、赤ら顔であった。
限界・・・と思ったその時曲が変わって、なんと中島みゆきの「地上の星」がドド~ンと流れ出した。
プロジェクトX。
臨界点を越えてしまった。
ダッシュで更衣室に行って、声を抑えて爆笑した。涙が出た。
なんでみんな平気なのだ。
誰かひとりでも肩が震えてるのがわかったら更衣室まで私はもたなかっただろうが、それでもこの苦痛に耐えているのが自分だけだと思うと理不尽である。
気が付いたら課長も客もいなくなっていた。
この話をダンナにしたら、「俺にはその気持ちはわからないけど、」と前置きし、
「でも1回だけ、おかしくて我慢するのがつらかったことがある。」と言った。
やはり葬式だ。定番である。
ダンナのおばあちゃんのお葬式だと言うが、だとすると8年ぐらい前か。
まともに葬式に出たのは初めてだったらしい。
そこで初めて生お経を聞いた彼は、それはもうおかしかったらしい。
それを言うなら、その後リズミカルに突然現れる木魚のほうがショッキングだと思うが、と言うと、続けて彼は「突然ゴ~~~ン、とかやるよね。」と言った。
爆笑リメンバーだ。
来月法事があるが、心配だ。