人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

不思議な声を聞く

今週のお題「ゾッとした話」

 

単に驚いただけではなく、「ゾッとした」経験。

それは、後になって知ったとか、あり得ないことが起こっているとか、そんな類だろうか。あまり経験がない。

思い出せることは、韓国に旅行に行った時、ホテルの部屋へ泥棒に入られたことか。

私と母が寝ている間に部屋に入って盗みを働いて行ったようだが、寝てて良かった!

もうひとつは、若い頃に夜中にドライブに行き(なぜ若者とは夜中にドライブをしたがるものなのだろうか)、出先の公衆トイレから出た後に、「実はぽ子さんが入った個室、ノックしたら返事があったんですよ・・・。」と言われたこと。これは怖かった。

でも今思えば、その子とはそのとき初めて会い、親しくはなかったのだ。信頼できる人かの判断はできない。嘘かもしれん。

 

あんまりゾッとしなかったと思うので、「子供心に怖かった」話をふたつ。

 

小学生だった私は、夏休みにいとこの家に泊まりに行ったのだ。

いとこの家の近くには大きな川があり、そこに子供達だけで遊びに行った。

川沿いは背の高い雑草で鬱蒼としていて、その中のうっすらとした小道を一列になって進んで行く。

いとこと離れないよう、慎重に、かつ素早く。

ガサガサとどれぐらい進んだだろうか。草に覆われて私はちょっと怖かった。その時。

「ゴケ。」という声を聞いたのだ!人間の声とは思えない、動物か何かの鳴き声のようなもの。

その聞いたこともない声が怖く、家に帰って夕食の時にその話をみんなにしたのだ。

 

「ゴケ!?」

「ゴケ(笑)」

食卓は、大いに盛り上がった。

「そりゃすごいね、ゴケ虫だ!」

「ゴケ虫だ!!」

つまり誰もまともに取り合ってくれなかったのだ。

本当に、確かに私は聞いたのだ、ゴケ、と!!

 

 

もうひとつ。これは実家にいた頃の話。これも小学生か、中学生になっていたか。

寝静まっている夜中。

この頃すでに私には睡眠障害の気があり、夜はいつもなかなか眠れないでいた。

その晩も寝付けず悶々としていたら、「チョ~イチョイチョイチョイチョイチョイ!!」という男の声が聞こえたのである。まるで歌か何かのように、小気味良く。

しかしなぜかそれは実在の声ではないように聞こえたのだ。

「ちょっとちょっと」という呼びかけの「ちょい」ではない。祭囃子の掛け声か、どうかすると鳥の声にも似たものであった。私の脳裏には、ひょっとこの顔が浮かんでいた。深夜にこれは、怖い。

私は向かいの部屋で寝ていた親を起こしに行った。

 

「お母さん、こわい。」

「どうしたの?」

「変な声が聞こえた。」

「何の声?」

「分からない。」

「どんな声なの?」

そこで私は言葉を詰まらせる。あのままそっくり「チョ~イチョイチョイチョイチョイチョイ!!」と言うことは可能だったが、とてもそのような雰囲気でも気分でもない。

「なんか、怖い声。」

「だからどんな?」

言えなかった。

 

ゴケもチョイチョイも、音ヅラが間抜け過ぎた。

私は本当に怖かったのだ。

誰にも分かってもらえなかったが。