今週のお題「ゾッとした話」
単に驚いただけではなく、「ゾッとした」経験。
それは、後になって知ったとか、あり得ないことが起こっているとか、そんな類だろうか。あまり経験がない。
思い出せることは、韓国に旅行に行った時、ホテルの部屋へ泥棒に入られたことか。
私と母が寝ている間に部屋に入って盗みを働いて行ったようだが、寝てて良かった!
もうひとつは、若い頃に夜中にドライブに行き(なぜ若者とは夜中にドライブをしたがるものなのだろうか)、出先の公衆トイレから出た後に、「実はぽ子さんが入った個室、ノックしたら返事があったんですよ・・・。」と言われたこと。これは怖かった。
でも今思えば、その子とはそのとき初めて会い、親しくはなかったのだ。信頼できる人かの判断はできない。嘘かもしれん。
あんまりゾッとしなかったと思うので、「子供心に怖かった」話をふたつ。
小学生だった私は、夏休みにいとこの家に泊まりに行ったのだ。
いとこの家の近くには大きな川があり、そこに子供達だけで遊びに行った。
川沿いは背の高い雑草で鬱蒼としていて、その中のうっすらとした小道を一列になって進んで行く。
いとこと離れないよう、慎重に、かつ素早く。
ガサガサとどれぐらい進んだだろうか。草に覆われて私はちょっと怖かった。その時。
「ゴケ。」という声を聞いたのだ!人間の声とは思えない、動物か何かの鳴き声のようなもの。
その聞いたこともない声が怖く、家に帰って夕食の時にその話をみんなにしたのだ。
「ゴケ!?」
「ゴケ(笑)」
食卓は、大いに盛り上がった。
「そりゃすごいね、ゴケ虫だ!」
「ゴケ虫だ!!」
つまり誰もまともに取り合ってくれなかったのだ。
本当に、確かに私は聞いたのだ、ゴケ、と!!
もうひとつ。これは実家にいた頃の話。これも小学生か、中学生になっていたか。
寝静まっている夜中。
この頃すでに私には睡眠障害の気があり、夜はいつもなかなか眠れないでいた。
その晩も寝付けず悶々としていたら、「チョ~イチョイチョイチョイチョイチョイ!!」という男の声が聞こえたのである。まるで歌か何かのように、小気味良く。
しかしなぜかそれは実在の声ではないように聞こえたのだ。
「ちょっとちょっと」という呼びかけの「ちょい」ではない。祭囃子の掛け声か、どうかすると鳥の声にも似たものであった。私の脳裏には、ひょっとこの顔が浮かんでいた。深夜にこれは、怖い。
私は向かいの部屋で寝ていた親を起こしに行った。
「お母さん、こわい。」
「どうしたの?」
「変な声が聞こえた。」
「何の声?」
「分からない。」
「どんな声なの?」
そこで私は言葉を詰まらせる。あのままそっくり「チョ~イチョイチョイチョイチョイチョイ!!」と言うことは可能だったが、とてもそのような雰囲気でも気分でもない。
「なんか、怖い声。」
「だからどんな?」
言えなかった。
ゴケもチョイチョイも、音ヅラが間抜け過ぎた。
私は本当に怖かったのだ。
誰にも分かってもらえなかったが。