お母さまと私が同じじゃないことは、もうわかってる。
なにしろお母さまはとっても大きいし、言葉も分からない。
それでもお母さまは、私をとっても大切に育ててくれた。
お母さまもこの家も、大好き。
なのにいつの日からか、「そこ」に何かがいるの。邪悪な何かが。
お母さまはピッタリと扉を閉めてしまって、私にはその気配しか感じられない。
カチャンとか、ガサゴソとか、何かが動いているみたい。
ちょっぴり怖いけど、気になるわ。
ある日、扉が開いていたの。
怖かったけど、そうっとそうっと近づいてみた。
そしたら向こうから「グゥ」って音のような声のようなものが聞こえてきて、びっくりして逃げちゃった。
何か、いる!
それはきっと、バケモノよ!
私はもう、近づくのはやめにした。
バケモノは、時々凄まじく吠えてる。お母さまは、どうしてあんなのを家に置いておくのかしら。居座ってしまって困ってるのかしら。
あれから扉は開けっ放し。
私はあいつに見つからないように、そうっと通るようにしてる。
それなのにある日、お母さまは私を抱き上げてあいつのところに!
ゆっくりゆっくり近づいて。
そうっと覗き込んでみると、そこには世にも恐ろしい毛むくじゃらで、目がふたつあって、鼻がひとつと口がひとつの妖怪が座ってこっちを見てた。
そいつ、今度は私を見て「キューン」って変な音を出したの!
キューンじゃねえよ!!
震えが出てきたら、やっとお母さまは離れてくれた。
怖かった。
怖かったけど、正体が分かったわ。あれは伝説の妖怪よ。
怖いけど、気になる。
私は時々そっと覗き込んでるの。
お母さまは「絶対にひとりで行っちゃいけません。」って言うけど、お約束、守れるかしら。
私、妖怪と住んでるのよ。