人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

『いる』

お母さまと私が同じじゃないことは、もうわかってる。

なにしろお母さまはとっても大きいし、言葉も分からない。

それでもお母さまは、私をとっても大切に育ててくれた。

お母さまもこの家も、大好き。

 

なのにいつの日からか、「そこ」に何かがいるの。邪悪な何かが。

お母さまはピッタリと扉を閉めてしまって、私にはその気配しか感じられない。

カチャンとか、ガサゴソとか、何かが動いているみたい。

ちょっぴり怖いけど、気になるわ。

 

ある日、扉が開いていたの。

怖かったけど、そうっとそうっと近づいてみた。

そしたら向こうから「グゥ」って音のような声のようなものが聞こえてきて、びっくりして逃げちゃった。

何か、いる!

それはきっと、バケモノよ!

 

私はもう、近づくのはやめにした。

バケモノは、時々凄まじく吠えてる。お母さまは、どうしてあんなのを家に置いておくのかしら。居座ってしまって困ってるのかしら。

あれから扉は開けっ放し。

私はあいつに見つからないように、そうっと通るようにしてる。

それなのにある日、お母さまは私を抱き上げてあいつのところに!

 

ゆっくりゆっくり近づいて。

そうっと覗き込んでみると、そこには世にも恐ろしい毛むくじゃらで、目がふたつあって、鼻がひとつと口がひとつの妖怪が座ってこっちを見てた。

そいつ、今度は私を見て「キューン」って変な音を出したの!

キューンじゃねえよ!!

震えが出てきたら、やっとお母さまは離れてくれた。

 

怖かった。

怖かったけど、正体が分かったわ。あれは伝説の妖怪よ。

怖いけど、気になる。

私は時々そっと覗き込んでるの。

お母さまは「絶対にひとりで行っちゃいけません。」って言うけど、お約束、守れるかしら。

 

私、妖怪と住んでるのよ。