人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

あん

ロケ地はわが町、東村山。当時この界隈で話題になった作品だ。

      

   監督:河瀬直美

   キャスト: 樹木希林、永瀬正敏、内田伽羅

 

小さな町の片隅でひっそりとどら焼きのお店に立つ千太郎。

いつものように町の女子中学生が集まり、お喋りに花を咲かせていた。

そんなところに現れた老婆。

ここで働きたいと言うが、どら焼き作りは案外力のいる作業である。手にも障害があり、とても勤まるようには見えない。

ところが彼女が置いて行った餡に魅せられ、千太郎は彼女・徳江を雇うことに。

不器用だが純粋な千太郎に徳江は、安らげる存在となっていく。

ところがある日、経営者が徳江を解雇しろと言い出した。

徳江の障害は、昔隔離されていた「らい病」から来ているんじゃないか・・・。

 

まったりとした雰囲気で、物語はゆっくりと流れていく。

千太郎、徳江、どら焼き屋にやって来る女子中学生、純朴で善良な人物ばかりで、終始暖かい雰囲気に包まれている。

それはホッとするものであり、退屈とはまた違う。

そこへ徳江をクビにしろという経営者だ。この一大事に、本当に胸が痛む。

しかし起伏に乏しく、それでもなお、物語はまったりと進むのだ。

これを良さと感じるかどうかには個人差があると思う。

比較的最近まで残されていた人種差別を、柔らかく作品に盛り込んでいる。

作品中の隔離施設は実在のもので、今でも私達の街にある。

これは2015年の作品だが、今もなお残る患者さんがいるなら、その一人一人の自由の幸せを願わずにはいられない。

観客がそんな気持ちになれれば、この作品にも意義が出て来るのではないか。

余談だが、若い頃まだ隔離政策の施行中に、定期的にこの施設へ雑誌の配達に行っていたことがあった。

健常者の無知で、それはただの「不思議な施設への配達」でしかなかったのだ。

今から30年ほど前の話である。

 

ぽ子のオススメ度 ★★★☆☆

ダンナのオススメ度 ★★★☆☆