一度は誘惑に流されそうになったとはいえ、結果的に深酒を免れた土曜日であった。日曜の朝は清々しく。
「今日は飲まないよ。」
朝一番で、宣言する。
飲む理由がないからね。
天気がいいからとか、昨日ちゃんと飲んでないからとか、そういうのは理由にならないのだ。昨日から。私は生まれ変わったのである。
兄の引っ越しであった。
もうほとんどの荷物は運び終わっている。
しかし音楽家の兄が「楽器だけは自分で運びたい」と言うので、アコーディオンとキーボード、ディジリドゥなどが残されていたのだ。
ところが腰をやらかしてしまい、私達夫婦が手伝いに行くことになったのである。
取り壊しになるというマンションはすでにもうがらんどうで、生活臭はなくなっていた。
兄夫婦の部屋は4階。エレベーターがないので往復することになる。
人海戦術にて数回の往復で済んだのだ。力になれたのは嬉しい。
しかしあのアコーディオン。
あれは肩からさげて弾く楽器である。それがあの重さとはどういうことか。激重であった。
あれに比べればキーボードなど、紙である。
新居は、江古田。
ここでランチを食べたが、いい町である。美味しそうなお店がいっぱい。学生向けなのかそんなに高くもなく、洒落た店、素朴な店、と多彩だ。
ランチに入った店も良く、私達も通いたいぐらいである。
「じゃあ。」と別れたのは3時半頃か。
実は、荷物を運んでいる時に一瞬よぎったことがあった。
すぐにかき消したがそれは、強く印象に残ったのだ。
それが傷跡のように、うずく。
家に帰り、犬の散歩を済ませたダンナは、改めて私に向き直り、問うた。
「で、どうする?」
うずいていた傷跡がえぐられる。
「そりゃ、明日仕事がある人に従いますよ、私は。」
「俺に決定打を踏ませようと。」
実は、バンド仲間からお誘いが来ていたのだ。
ダンナは翌日早番なので、私が禁酒するまでもなくダンナが断ると思っていた。
しかしこの展開。ダンナは私に決定打を踏ませようとしている(笑)
「私はね、無駄酒をやめるとは言った。でも、人付き合いは無駄酒とは違うし、疲れて一杯やりたいところを我慢するのもまた違うと思ってるよ。」
飲むんかい(笑)
ということで、友人夫妻と飲む。
朝になり、2軒目でダンナと「You spin me round」に合わせて阿呆のように踊り狂っている動画が送られてきた。
負けた。
日曜日、私は酒に負けたのである・・・・・・・。