人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

地雷2021・1

朝6時出発、7時半には銀座のレストランに着いている予定であった。

ダンナの誕生日祝いだ。しかし実際の誕生日は、前日の金曜日なのである。金曜日。誕生日の金曜日。ちょっとぐらい飲みたいじゃないか、ということで、飲み過ぎない程度に軽く、ということにしたんだが。

「もういっか、明日は。」

「いいよいいよもう。だってクリスマスと被って色々大変でしょ?」

「違う日にやり直そう。もっといい日があるよ。」

飲むほどに自制が効かなくなり、結局セーブしながら飲むのが嫌になった。誕生日祝いは延期、今日はとことん飲もうという運びになってしまったのだ。

寝た時の記憶はないが、朝。時計を見ると、5時半。部屋を出たがって鳴いていたエルを、ダンナが救出に来た。ダンナも起きているということである。体調、良し。これなら予定通り決行できるんじゃないの??

「おはよう。」

「お、早いね。」

「行くよ。」

「え!?行くの!?」

「そう、行くの。」

ダンナは慌てて風呂に向かう。私は準備をする。が。・・・ない。

前夜が思い出されてくる。

スマホがなくなったんだった。

私の記憶では、家に帰ってから使った覚えがある。家の中にあるはずだ。それが、ないのである。

いつからなくなったのかは思い出せない。寝る時に充電しようと思ったら、なかったのだ。それまではあったような気がするんだが。

パソコンから音を鳴らす、という方法があったので試してみるも、どこからも音は聞こえてこない。GPSで場所も特定できるはずなんだが、マップが表示されない。スマホ側の設定ができていないのかもしれない。

スマートウォッチから鳴らす方法もあったが、これも鳴らなかった。

「これはもう、家にはないよ。」ダンナが絶望的なことを言った。

一体どこに・・・。

家で使っていないとなると最後に使ったのはバスだと思われるが、バスに「置き忘れる」とは考えにくい。座って膝に乗せたバッグにしまうはずだ、落とすとも考えにくい。

「じゃあその前となると・・・。」

「サイゼ。」

料理の写真を撮ったのだ、確実に使ってはいるが、果たして忘れるか?テーブルの上にボーンと。

しかし実際に今ここにないのである。そういう可能性を辿っていくより他はない。

スマホがないと、出掛けることができない。あの中のメモに、この日のタイムスケジュールが書いてあったのだ。行き先のマップや情報も、調べることができない。アホらしいが、私はまた地雷プランを組んでいて、ダンナに行き先を知らせていないのである。ダンナも頼れない。

はぁ~、やっぱり延期か。着替えに寝室へと入ると、昨夜寝た時のことがふと頭をよぎった。

ここまで持って来た気がする。ここまではあったはずだ。

布団をめくる。ベッドの向こう側の覗き込む。

ありましたEE:AEB64

どういう訳か、向こう側に転がり込んだらしい。

「あったあった!」ないよりマシだが、バツが悪いことこの上ない。

そして再び時間が動き出す。急いで出発だ。すでに1時間遅れである。

こうして何とか決行となった。

今年の地雷ツアーの始まりであった。