母の命日であった。
危うく忘れるところだったのだ。ダンナに言われて思い出したのである。3年という月日は、そういうものなのだ。
時計を見ながら、3年前のこの時間にはどうなっていたのかを、なぞる。
まだ生きていた。
兄から連絡があった。
車で向かった。
手を握った。
空を舞う、名も知れぬ花の綿毛。
霊安室。
病院の裏口で葬儀屋を待った。
一番星。
母を置いて、家路についた。
そんなことも、やがて忘れてしまうのだろうか。
命日。
故人を忘れないための日だ。
今年も庭のバラを飾り、母が好きだったビールを供え、夜を過ごそうと思う。