人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

レクチャー

「これですね。ラッキーちゃんの場合は、150mlぐらいかな?」

診察台の上にはラッキー、その手前に私と娘ぶー子は控え、先生の説明を聞いている。

これからは、自宅で自力でラッキーに点滴をすることになるのだ。

「これが加圧バッグ。ご用意したいただくことになりますが。」

「カーツバッグ。」スマホにメモをしかける。

「こうやってここを押していくと膨らみますので、」

「加圧かEE:AE4E6

「この中に点滴のバッグを入れて、膨らましていきます。」

(なぜEE:AEB2F

「ここのレバーをこっちに向けると空気が入っていきますので、逆に終わったら今度はこっちに、」

(えっえっ、ちょっと待って、どっちEE:AEB2F

「で、セットできたら今度はこのバネばかりで、」

「ガネばかり、メモメモ。」

「バネばかりです。」

「ガネばかり。」

「いい、私がメモしとくから。」とぶー子。

「このはかりにこのバッグをぶら下げると、ハイ、重さが出ます。だいたい400?」

(400??どこ見てる??)

「ラッキーちゃんには150ですから、これが250になるまで入れればいい訳です。」

(400どこ?ってか針はどこなんだ。)

「で、こうしてチューブに繋がってますので、このチューブいっぱいに液が来るまで出していきます。」

(400-150?? 400-150って??このバッグが軽くなれば針が上がっていくから、数は減るのか?増えるのか??)

「液を流していくには、このスイッチをこっちに。」

(ん?チューブに空気残ってたらヤバいよね!?ここは大事なんじゃないか?)

「こうするとハイ、こうして液がどんどん出てきますね。」

(液がどんどん出てきますね。←棒読み)

「準備ができたら、針をつけて。」

(準備できてるのか?チューブ長いけど、もう液は先までいっぱい入ったのか?)

「そしたらこうやって首の皮を引っ張って、」

(液が先まで来てるのか、分かってるのか!?全然見てないけど!!)

「刺します。」

(!!!!!)

(む、)

(無理じゃね~EE:AEB2F

「垂直に針を入れます。」

(垂直??垂直って、どこに対して何がどう・・・EE:AE5B1

「あぁ、垂直ですね。」

(ぶー子EE:AEB2F

「これが角度が悪かったりすると、突き抜けちゃったりします。」

(垂直。)

「針も入れ方が浅いとすぐに抜けちゃったりするので、気を付けてください。」

(垂直?EE:AEB64

ぶー子が「これならできるかもしれない。」と言ったところから、何やら先生とふたりでやりとりがあった。しかし私の思考は混乱して、もはや何も入って来なくなっている。

このままではいけない。

私がやらなくてはならないのである。

意を決して、先生に聞いてみた。

「あのー、このチューブに空気は入ってないんですか??」

・・・・・・。

一瞬の沈黙があってから、先生は戸惑ったように答えた。「空気は抜いてから、刺しますEE:AEABF

「これ、ずいぶん長いですけど、今もう空気は抜けてるんですか??」

「大丈夫です、これは・・・・・。」

何とか言っていたが、意味が分からなかったEE:AE4E6

小学校の授業を思い出した。

彼らは私に構わずどんどん進んでいくのである。そして聞いても分かるような答えは返って来ないのである。

思い出したくないことを思い出してしまった。

病院を出ると、私はぶー子の肩をわしづかみにして言った。

「・・・・・・もしかして、できるEE:AEB2F

「えっEE:AEB2F刺す感覚とかはやってみないとこればっかりは分からないけど、できそうじゃん。いいよ、やるよ。」

我が娘ながら、たくましく育ってくれた。

親が不甲斐ないと、子供は強くならざるを得ないのだ。

この強さがありがたくも、不憫である。

こうしてまずはぶー子がマスターし、私がそれをゆっくり伝授してもらうことになった。

色々説明を聞いたが、チューブに空気は大丈夫なのか、それ以外何も残っていない。