「これですね。ラッキーちゃんの場合は、150mlぐらいかな?」
診察台の上にはラッキー、その手前に私と娘ぶー子は控え、先生の説明を聞いている。
これからは、自宅で自力でラッキーに点滴をすることになるのだ。
「これが加圧バッグ。ご用意したいただくことになりますが。」
「カーツバッグ。」スマホにメモをしかける。
「こうやってここを押していくと膨らみますので、」
「加圧かEE:AE4E6」
「この中に点滴のバッグを入れて、膨らましていきます。」
(なぜEE:AEB2F)
「ここのレバーをこっちに向けると空気が入っていきますので、逆に終わったら今度はこっちに、」
(えっえっ、ちょっと待って、どっちEE:AEB2F)
「で、セットできたら今度はこのバネばかりで、」
「ガネばかり、メモメモ。」
「バネばかりです。」
「ガネばかり。」
「いい、私がメモしとくから。」とぶー子。
「このはかりにこのバッグをぶら下げると、ハイ、重さが出ます。だいたい400?」
(400??どこ見てる??)
「ラッキーちゃんには150ですから、これが250になるまで入れればいい訳です。」
(400どこ?ってか針はどこなんだ。)
「で、こうしてチューブに繋がってますので、このチューブいっぱいに液が来るまで出していきます。」
(400-150?? 400-150って??このバッグが軽くなれば針が上がっていくから、数は減るのか?増えるのか??)
「液を流していくには、このスイッチをこっちに。」
(ん?チューブに空気残ってたらヤバいよね!?ここは大事なんじゃないか?)
「こうするとハイ、こうして液がどんどん出てきますね。」
(液がどんどん出てきますね。←棒読み)
「準備ができたら、針をつけて。」
(準備できてるのか?チューブ長いけど、もう液は先までいっぱい入ったのか?)
「そしたらこうやって首の皮を引っ張って、」
(液が先まで来てるのか、分かってるのか!?全然見てないけど!!)
「刺します。」
(!!!!!)
(む、)
(無理じゃね~EE:AEB2F)
「垂直に針を入れます。」
(垂直??垂直って、どこに対して何がどう・・・EE:AE5B1)
「あぁ、垂直ですね。」
(ぶー子EE:AEB2F)
「これが角度が悪かったりすると、突き抜けちゃったりします。」
(垂直。)
「針も入れ方が浅いとすぐに抜けちゃったりするので、気を付けてください。」
(垂直?EE:AEB64)
ぶー子が「これならできるかもしれない。」と言ったところから、何やら先生とふたりでやりとりがあった。しかし私の思考は混乱して、もはや何も入って来なくなっている。
このままではいけない。
私がやらなくてはならないのである。
意を決して、先生に聞いてみた。
「あのー、このチューブに空気は入ってないんですか??」
・・・・・・。
一瞬の沈黙があってから、先生は戸惑ったように答えた。「空気は抜いてから、刺しますEE:AEABF」
「これ、ずいぶん長いですけど、今もう空気は抜けてるんですか??」
「大丈夫です、これは・・・・・。」
何とか言っていたが、意味が分からなかったEE:AE4E6
小学校の授業を思い出した。
彼らは私に構わずどんどん進んでいくのである。そして聞いても分かるような答えは返って来ないのである。
思い出したくないことを思い出してしまった。
病院を出ると、私はぶー子の肩をわしづかみにして言った。
「・・・・・・もしかして、できるEE:AEB2F」
「えっEE:AEB2F刺す感覚とかはやってみないとこればっかりは分からないけど、できそうじゃん。いいよ、やるよ。」
我が娘ながら、たくましく育ってくれた。
親が不甲斐ないと、子供は強くならざるを得ないのだ。
この強さがありがたくも、不憫である。
こうしてまずはぶー子がマスターし、私がそれをゆっくり伝授してもらうことになった。
色々説明を聞いたが、チューブに空気は大丈夫なのか、それ以外何も残っていない。