およそ、10年で12万回だ。そんなにしていたか。
腕の中のエルを見ると、スヤスヤと安心しきってぐっすり眠っている。
私の腕を枕にして、人間のように頭だけ布団から出す。私から見るとすぐそこに頭、もしくは顔がある状態だ。
猫の頭、つまり上から見て耳と耳のあいだには、ちょうど良いスペースがある、キスをするのに。
チュ♪
エルはそれでも安心してぐっすり眠っている。
もういっちょ、チュ♪
一度行動に移してしまうと、それはエスカレートするものである。
今度は頭に口をつけたまま、連射する。チュチュチュ♪
その行為は、更に自分をかき立てていく。チュチュチュチュチュ♪
う~~ん、最後にひとつ、チュ♪
チュ♪+チュ♪+チュチュチュ♪+チュチュチュチュチュ♪+チュ♪
この1ターンで11キスだ。
これを1日に3ターンとすると、1日33キス。
一年で12045キス、10年で120450キス、ということである。
エルを保護してから約11年。最初の1年はまだ小さかったからこんなにキスを連射してなかったことを考慮して、この数字だ。しかしきっと小さかろうがキスはしているだろうから、実際はもうちょっと多いかもしれない。
10万回のキス。
一昔前のトレンディドラマのようではないか。
こんなに多くのキスを受けた者は、他にいるだろうか。
そして、こんなに多くのキスを許された私も、なかなかなものだと思う。