ジャケ買いならぬ、タイトル買い。
優しく癒されるような話を読みたかったのである。
しかし読んでみたらこの神様は、企業に対する「お客様」の神様であったEE:AEB64お客様は神様です、ってやつねEE:AEB64EE:AEB64
ということで、これはサラリーマンの生き様を描いた物語であった。
しょっぱなから会議の場面である。こりゃ相当堅い話かと覚悟をしたが、主人公はどこにでもいるような20代の青年だ。
ちょっとした野心を持ち、しかしどこか気弱で、長いものに巻かれたくはないと思いつつ抗えない。
代替わりした社長は入院、若き副社長が社内の腐敗を一掃してくれそうな雰囲気に期待する主人公ではあったが、「お客様相談室」という社内でも「最後の行き場」に配属され、淡々と業務をこなしていく毎日に。
家に帰っても、半年前まで一緒に暮らしていたリンコはもういない。
小さないさかいはしょっちゅうあったが、一体何が原因で出て行ったのか、見当もつかないままだ。
このままでいいのか。
会社で意味のない仕事をし、意地を張ってリンコのことは封印し、一体自分は何をしているのか。
真摯に生きる人間と、それを踏み台にする人間。
そんなものを目の当たりにして、彼はついに勇気を出して一歩前へ進むのだ・・・。
社内の腐敗にどう立ち向かうか、などというとともすれば堅くなりがちな題材だが、ジャニーズでも出て来そうなドラマのように軽い仕上がりになっていて読みやすい。
職場の面々も個性的で好感が持て、虐げられている彼らを応援したくなる。
ただ文章の、鼻につく比喩の多さがクドい。「ホラ、気の利いた言い回しでしょ」という考え込まれた比喩。
それがこの作家の良さになるのかもしれないが、私はちょっと馴染めなかった。
話はとっても面白かった。
でもやっぱりドラマEE:AEB30って感じが拭えん。
そういうスタンスで見られればいいだけだが。
ぽ子のオススメ度 ★★★★☆
「神様からひと言 / 萩原浩」
光文社文庫