人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

夢を当てる詐欺

<<見直ししてないよ~~。下書きのままぶっこむよ~~~>>

猫、検査。

午前中に置いていき、夕方に回収だ。

午前の動物病院の帰り道で、買い物を済ませることにした。

通り道にあるスーパーは1軒。

激安スーパーにばかり行っている自分にはちょっとお高めのスーパーだ。モノはいいので、昔よく値下げの時間帯に行ったものである。

今夜はダンナがいないので、簡単な買い物だけだ。ここでもいいだろう。

久しぶりに来たスーパーは、思っていたよりも高くもなく、品数も豊富でウハウハであった。

予定よりも多くのものを買い、レジでお金を払った。

その時に、温泉旅行の抽選券を貰ったのだ。

どうせ当たりはしないだろうが、可能性はゼロではない。悔しいが、期待してしまう自分がいる。

抽選券に住所氏名を書き込み、箱に入れていく。

もうひとつ。

レジで、「お買い物された方に抽選会をやってますので、このレシートを持ってあちらの方へ行って下さい」と言われていた。

こんなチャンスを2つも貰い、何となく心躍るスーパーの午前。

レシートを持って抽選会場を探す私と、抽選会場でレシートを持つ人を探す女性は、すぐに出会うことができたのだ。

「どうぞどうぞ」。歓迎とでも言って良いほどの迎えっぷりだ。

しかし抽選会場は思ったよりも小さく、チラッと見えた景品はクリアファイルのようであった。断捨離的観点からいえば、これは危険なシチュエーションである。

まず私は抽選の権利の証明であろうレシートを見せようとしたが、女性は見ようともせずに穴の開いた箱を差し出した。

誰でもどうぞ的な抽選なのか。まぁ景品、ショボそうだしな。手を突っ込んで折りたたんだ紙をひとつ取り出す。

何というか、手作り感漂うものだ。ぞんざいに切って、ぞんざいに折ってある。客様を喜ばせるイベントというよりも、やっつけ仕事のような。

そして実際この作業は、この先にある「メイン」の前菜であったことを知る。

私はD賞という、恐らくほとんどの人が手にする賞を当て、ティッシュをひとつもらった。

アハハ、じゃ、と帰ろうとすると、女性はすかさずアンケート用紙を出して「すみません、今、女性の仕事に対する意識調査をしているのですが、ご協力いただけますか?」と立ちはだかった。

たかだかティッシュで弱みを握られたような気持ちになる。まぁいいや、答えてやるから何かの役に立ててくれや。私はティッシュを役立てるよ。

「現在、仕事をしていらっしゃいますか?」

私はマイナス思考で大変疑り深い。特にこういった事案には。

なのでこの時点ですぐにオチが見えた。

見えたが、アンケートの段階だ。今すぐどうということにはならないだろう。「いいえ。」と答える。

「今、仕事をしたいと思いますか?」

したいなどとと答えたら、長い付き合いになりそうな予感だ。そうはいくか。「いいえ。」

ここで私を囲んでいた二人が大げさなほど「ええっ!?」と言った。なんだそれw

「では日中、何をしていますか。1、家事。2、育児。3、趣味。4、その他。」

家事、と答えてからこれでは優等生過ぎると思い、「と、趣味」と付け加えた。

「え~~!?何をやってらっしゃるんですか!?」ふたりの女性がまるでキャバクラの接待のように妙にはしゃいで聞いてくる。

えー!?何って・・・、ゲーム?歌?とっさにこのところ課題曲の耳コピをしていることが浮かんで、「バンドやってるんで・・・。」と答えてしまった。

言ってからしまったと思った。こういう答えはキャバ嬢の仕事をやりやすくしてしまうだろう。

案の定ふたりはすごいすごいと必要以上に盛り上がり、パートはなんですか、どんな音楽やってるんですか、と詰め寄ってきた。

私は彼女らが盛り上がれば盛り上がるほど、大きな試練が待っている覚悟をする。

なんなんだ、これは。なぜそんなに持ち上げる。

「お子さんはいらっしゃいますか?」

「はい、もう家出てますが。」

ここでまた「えー!?」と言い、「そんなに大きなお子さんいらっしゃるんですか?!」となり、「おいくつですか?!」となり、「え~、見えない~~!!」となる。

あのね、若い頃モテなかった賜物で、お世辞など真に受けるようなおめでたい人間にはならなかったのだよ。

長い冬だったが、現実を知るというありがたい体験であった。

で、いよいよ核心だ。

「ではよろしかったらここに、住所とお名前を・・・。」

恐らく彼女らが欲しかったのはこれだろう。ティッシュと引き換えの個人情報だ。求人情報でもよこすのだろう。

しかしいらん。

お世辞も不愉快であった。

そして、見返りがティッシュとは、軽すぎる。

「あ、そういうのは書きたくないので。」とヘラヘラッと逃げようとしたら、一瞬で彼女たちの表情が凍りついた。

「えー、あのー。」「えー、ライブ行こうと思ったのに~。」は!?

ここまで来ると、抽選詐欺のようだ。

個人情報という大切なものを渡さない自分の方が、まるで悪いことでもしているような気持ちになる。

ちょっといい気分だったのに、もう温泉も当たる気などしなくなった。

そもそもこうなると、温泉も怪しいものだ。

しかし当たれば温泉だ、彼らはそれなりの代償は払っている。外れようが住所を書こうが、納得できる。

後味悪いまま、早足で店を後にする。

私はトイレを我慢していたのだ。しかも大きい方。

ティッシュはありますがね。