我が家の壁は、猫に爪を研がれてボロボロである。
猫、と言っても犯人はエルひとりだ。そんなことをするのはエルしかいない。
色々試してみたが、彼女はどうしても壁で爪を研ぐのをやめてはくれなかった。
爪を研いでも構うな、というアドバイスもあったが、勝ち誇ったような顔でこちらを見ながらやられると、黙ってはおれないのである。
こうなると、エルをしつけるよりも壁をカバーした方が早い。
早いという段階はとうに過ぎているが、10年後よりは早いのだ、遅くとも、思い立ったら行動すべきである。
しかし、何が有効なのか。
要は壁を何かでカバーすればいいのだろうが、何でもいい訳ではない、ここは生活空間だ。見栄えというものがある。
専用の透明のシートを貼ったこともあったが、あんなのはものともしなかった。シートごとバリバリ。さらに食いちぎってご満悦である。
ではもう爪研ぎにしてしまおうと、コーナー部分に木を貼ったこともあった。
こちらはスルー。
かなり大掛かりに作っただけに、ガッカリの結果である。
しかし、相手にしなくなったということは、そこは守られたという事でもある。
木を貼った部分は諦めてくれたようだが(諦めなくていいのに)、2つあるうちの1つは、引力に負けて落ちてしまった。それはまだ床に落ちたままである。1年は経ってないと思うが。
実は、最終的なガードというものは、もう数年前に考え付いてはいたのだ。
タイルを貼った板を吊るす、というものだが、こちらも大掛かり過ぎて、行動の旬を過ぎてしまった。熱いうちに打つべきであった。
諦めた訳ではないが、今すぐにはどうにもならない。とりあえずでも何とかならないものか。
私は100均に行くと、トイレの粗相ガードの案と共に、あれこれ考えていたのであった。
思えばトイレの粗相もエルだけである。本当に困った子だ。
もうあまり壮大な案にすると実現が遠くなるから、何か貼るだけでいい。
当分人が来るとは思えないから、みっともなくてもいい。
包装紙あたりか。
う~ん、みっともないというか、柄が・・・。
あれはおめでたく包むものである。壁に貼るものではないのだ。
店内をウロウロして見つけたのが、梱包剤といのだろうか、いわゆる「プチプチ」などと言われているシートである。
これならプチッとした違和感があり、思わず手を引っ込めたりしないか。
さて、買ってから2週間は経っただろうか。やっと着手した。
大雑把に切って貼るだけである。簡単じゃないか。
テーブルに広げてはさみを入れていると、大五郎が飛び乗ってプチプチに噛み付いたのだ。
嫌な予感はしたが、壁にこのプチプチを貼った途端に大五郎がバリバリッと爪で剥がし、剥がれた部分に噛み付いて引っ張ってさらに大きく剥がしてしまった。
あまりに豪快な暴れっぷりに呆気に取られてしまったが、ゴラーと脅すと彼はすぐに退いた。
割と臆病なのである。それっきりだ。
剥がれたプチプチをもう一度貼っていったが、今、それはすでに半分剥がれている。表面がザラザラのクロスなので、両面テープがちゃんとつかないようである。
これもダメだったか。
まぁ剥がれ落ちるまで頑張れ。