ミステリーのようなタイトルだが、ドキュメンタリーである。
不可解な13の事件を、ひとつずつ掘り下げていく。
中には未解決のものも死刑を執行されたものもあるが、共通するものは「なぜ」という思いばかりが残る点である。
限りなく「クロ」なのに、物証がないがために無罪放免となった容疑者。
無理心中を図り、自らがこと切れるまで心境をテープに吹き込んだ男。
ある日突然帰らなくなった夫は、全て同じ形に切り刻まれて捨てられていた話。
殺人罪で無期懲役の服役中に復讐を誓い、仮出所するや否や結果的には何の関わりもない人間を合計70数ヶ所も刺して殺した男・・・。
私がこの手の本を好んで読むのは、人間の狂気はどこから生まれてくるのかが気になるからである。
生まれつき歪みやすい人間もいるかもしれないが、多くはその生まれ育った環境から道を外していく。
このような事件をなくすためには、不幸な生い立ちを減らすことが先決だと痛感するが、全ての家庭を幸福にすることは不可能だ。
これからも、残忍な事件は後を絶たないだろう。
人を殺めるにはかなりのエネルギーが必要だと思うが、恨み以外の理由でそれができてしまうのには理解に苦しむ。
逆に言えば、どんなに正しく慎ましやかに生きていても、殺される時には殺されるのだ。
地味に戸締りに気をつけているが、殺られるかどうかはただ運命である。
ぽ子のオススメ度 ★★★★★
「殺人者はそこにいる」 新潮45編集部・編
新潮文庫・¥476税別