妄想エッセイという新ジャンルを切り開いた無気力文学の金字塔。
この言葉に惹かれて衝動買いしたのだが、あんまり面白いので、あっという間に読み終わってしまったのだった。さて、妄想エッセイとは。
著者・せきしろ氏は今日も喫茶店ルノアールに赴く。
ただ座って、ある時はゲームの攻略本を読み、ある時はウトウトとしている。
大した出来事は起こらないが、彼の頭の中では妄想が暴走し、センセーショナルな毎日なのである。
「アクション!」と言う声で起こされ、背中に鋭い視線を感じ、島村藤村やチェッカーズに思いを馳せる。
彼の思考は常に自由である。 自由すぎて枠を飛び出し、果てしなく広がっている。
その果てない世界に、私達も泳ぎだすのだ。
本には話が面白いものと文章が面白いものがあるが、これは典型的な後者である。
実際に起こっていることはつまらない日常なのだが、彼の突飛な妄想と文章力で観る側を充分楽しませてくれるのだ。
年齢が近く、自分と共通点が多かった事もあるだろう、共感できる部分もあり、なお楽しめたと思う。
他に見ないジャンルである。 面白かった。
「パンがなければルノアールでモーニングを食べればいいじゃない」マリー・アントワネット
ぽ子のオススメ度 ★★★★★ 「去年ルノアールで・完全版」せきしろ著 マガジンハウス ¥650(税別)