猫物語でもラブストーリーでもなく、死生観、だと思う。
監督:永井聡
キャスト: 佐藤健、宮崎あおい、濱田岳
突然余命僅かと宣告された、「僕」。そしてその夜、自分と同じ姿の死神、いや悪魔か。今度は彼に、「余命は一日。明日死ぬ。」と宣告される。
絶望する間もなく呆然としている「僕」に悪魔は、「この世界から何かを一つ消せば、寿命を一日延ばしてやる」と取り引きを持ちかける。
そして言われるがまま、まず世界から電話が消えた。翌日には映画が。
どちらも耐えうる範囲かと思いきや、「僕」は同時に大切なものも失っていくことに気付く。
どんな物事も、必ず何かが自分と繋がっているのだ。
自分の死は、そして自分の生は、必ず何かと繋がっている。そしてそれは、思っているよりも深く、広い。
そんなことに気付いた「僕」は、取り引きをやめて死を選ぶのか。それとも生を選ぶのか。
スマホを手にする時代でありながら、徹底して背景はレトロだ。それが柔らかい暖かさを醸し出しているが、ストーリーの方もふんわりし過ぎて伝わりにくい。
肝心な父親との確執も曖昧で分かりにくく、故にラストの感動も薄い。
他者の「死」を何度か目の当たりにすることになるが、その影響も生かせていない。
何だか色々ともったいない作品だと思った。
・・・というところで私の感想は★2つというところだったのだが、ダンナの感想を聞いて考えが変わった。
ネタバレ考察を最後に。
ぽ子のオススメ度 ★★★☆☆
ダンナのオススメ度 ★★★☆☆
<ネタバレ考察>
ダンナが、悪魔の件は結局妄想だったのでは?と。自分の心の中の葛藤だと。悪魔は「死を受け入れられない自分」だったのだ。確かに最後の方でそんなようなことを言ってたような。
なるほど、最後に世界がもとに戻っているのは辻褄が合わないと思っていたが、そうなるとどこからが妄想でどこからが現実なのか。考え直してみた。
もし電話がなかったら、彼女との出会いもなかった。
もし映画がなかったら、タツヤとの友情も芽生えなかった。ブエノスアイレスに行くこともなかった。
もし時計がなかったら、父は母の時計を直すこともなかった。
冒頭の「僕が死んだら、誰か悲しんでくれる人はいるだろうか?」の答えはそこにあったのではないか。彼はもう、なくてはならない存在だったのだ。そしてそれに気づいた時、彼は猫を消さないという選択ができたのだろう。
「もし猫が消えたなら」・・・、このタイトルは、最後の自分への問いかけになったことだろう。そして彼が向かった先は、父のところだった。
悪魔が妄想であったなら、この後彼はもっと長く生きたかもしれない。
きっと幸せな最期の時を送ったことだろう。
などと考えてみると、なかなか深い作品だったのではないかと思えて来た。
しかし分かりにくく、伝わりにくかったのは致命傷だ。
もともとは小説だったみたいなので、そっちの方が言語化されてるだけ分かりやすいかも??
そんなんで、★は3で。