人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

13分33秒の苦悩

宅配DVDを借りているのだが、これは月に4枚までという、言い換えれば4枚観ないと損をするというコースである。

しかし飲むと観ている途中で遭難するので飲まない日に限られ、休日はラーメンのせいですぐに眠くなるし、なかなかいいペースで観れないのが現状であった。

それでもいちいち借りに出るのは億劫だし、安いのである程度の金額は捨てる覚悟で続けている。

今週はできるだけ飲まないようにしていたので、DVDを観るチャンスであった。

このDVDが来てからもう、2ヶ月も経ってしまっている。

どうせならこんな所に無駄金を使わずに、東北に送るべきであった。

今は速やかにDVDを返却する事が、被災者にできることなのかもしれないEE:AE4E6

戦争モノだった。

主人公がとある部隊に呼ばれる。

いよいよこれから訓練が・・・、というところで画面が止まった。

良くあることである。

我が家ではPS3でDVDを観るが、あまり調子が良くないのでしょっちゅう止まったり進んだりするのだ。

チッと舌打ちして、少し巻き戻すダンナ。

彼は子ウサギのように大人しい人間だが、なぜかこういうのにはすぐにキレる。

しかし少し戻してみても、いつも同じところで止まるか、そこから急に先の場面に飛ばされてしまう。

「俺、マジでこういうのは我慢がならないEE:AE4E5

ダンナは負けるもんかとばかりに、何度も戻し、再生する。

どうやらダメだと分かると今度はスローにしてみたりコマ送りにしてみたり、進めて戻してスローにしてみたり、あらゆる再生を試みた。

しかしどうしても止まる。止まるか飛ぶ。

「・・・しょうがないからこっちね。」

ダンナはディスクをHDDプレイヤーの方に移した。

なぜここまで粘ったかと言うと、こちらはホームシアターのスピーカーに繋がっていないので、少々臨場感に欠けるのである。

しかし観れないよりはいい。

テレビで放送している映画を観ていると思えばいいのだ。

で、止まるのである(笑)

ダンナは激怒し、ここでもあらゆる方法で再生していたが、どうやってもダメなのであった。

13分33秒、シーン3。

ここにキズでも入っているのだろうか?

「プレイヤーのクリーニングをしてみたら?」

そう言えば長いことクリーニングという事をしていなかった。と言うか、こんな事でもないとクリーニングなどしない。

合理主義なのである。言葉の使い方が違うか。

クリーニング用のディスクを入れ、ほんの数秒。

再び映画のディスクを入れ、緊張の中、13分33秒の瞬間を待つ。

「ああー・・・。」同時に声が漏れる。

「これはクレームしかないね。もう返そう。」「うん。」

というところで話がまとまったのだが、ダンナはふと立ち上がり、「ダメかな?」と言ってDVDクリーナーを取り出した。

今度はディスクの方を磨くのだが、「賞味期限、切れてる(笑)」、まぁ辛うじて何か効き目のある成分が残っているかもしれない。

こうなったらやれることは全てやってやろう。

もう何十回目の再生だろうか。

13分33秒を一番多く再生された映画になるだろう。

期待はしないのに、緊張は高まる。

無駄であった。

それでもダンナは、まるで売られたケンカを買うように、しぶとく再生を繰り返していた。

「ここでこのシーンに飛び、時間のカウントだけ何でかちょっと戻るんだ。で、戻すと勝手にこんなところにまで戻る。」

13分前後にやたら詳しくなったダンナだが、飛んでしまう7分間がどうしても惜しい。

私は諦めて皿を洗い始めたが、今度はダンナ、ディスクをパソコンに突っ込んだ。

もう気が済むまでやって下さい。

正直私も、こんなに頑張っても折れない「ワンスアンドフォーエバー」の頑固なディスクが憎たらしくなっていた。

やっちまいな、そんな気分であった。

皿を洗いながら遠目にモニターを見ていたが、やはり気になるので13分あたりからはガン見だ。

それが呆気なく再生したので、喜ぶタイミングを逃がしてしまった。

そのままここでしか観れない7分間を、ふたりでボーッと朝礼のように突っ立って(ボーッと突っ立っていたのは小中学生の時の朝礼であって、今の会社でそんな失礼なことはしない、と言わせて欲しい)観た。

幻の7分間のシーンが終わるとダンナは「・・・で、どうする?」とこっちを仰いだ。

時間を見たら、もう10時半であった。

トラブッてから1時間近く経っている。

しかしこれを逃がしたら、またもう一度機会を作らなくてはならなくなる。

かくして12時半まで映画上映会だ。

しかし後悔はしていない。

ザマーミロという晴れ晴れとした気分であった。