人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

愛の仕業

1月16日(日)、快晴。

予定、日比谷公園のダヴィンチ展に行く。

エルの鳴き声で目が覚めた。朝である。

時間は分からないが、まだ早いに違いない、眠い。

しかしエルは執拗に鳴く。

私達が「天使」と呼んだエルは、ひどいダミ声である。

天は二物を与えなかった、と私達は嘆いたが、早朝から「グゲエ」「グゲエ」とエルのダミ声が何度も聞こえてきたのだ。キツい。

いつもなら、私が起きるまで部屋から出たがることはない。これも発情期の絡みなのだろう。

しかしエルをリビングに下ろすなら、天敵ミを連れてこなくてはならない。

寝室にミのにおいをつけるのはエルに良くなさそうだから、そうなると娘ぶー子の部屋か。

あぁもう、そういうゴチャゴチャした事を考えるのも、眠い。

答えは簡単だ、このままで良い。

私はこういう事にはしぶといのである。

目を閉じて、寝る努力。

次にはダンナがエルのご飯を持ってきた。

彼は黙ってご飯のお皿を置いて、出て行った。

まだ寝てて良い、そういう意味なのだろう。

引き続き、寝る努力。

やっと自分から目が覚めたのは、体中が痛かったからである。

寝過ぎた。

この痛みは、病気で寝込んだ時の痛みと同じである。寝過ぎだ。

恐る恐る時計を見ると、11時15分だった。あちゃー。

こんな時間になってしまったが、まだ日比谷には行けるだろうか?

しかし天使がEE:AEB64

先ほど鳴きわめいていたエルは、私の腕枕でグッスリ寝ていた。

簡単に腕枕というが、すごい状態なのである。

私の腕の長さは約55センチあるが、腕枕というものは、脇の下の近くで寝るられほど愛を感じるものである。

その時のエルはまさに脇の下からゼロセンチ、「腕」ではなく「脇の下の上」というややこしいところでお休みになっていたのである。こちらに顔を向けて。

愛、炸裂である。

あんなにグゲエと鳴いていたエルが、頭を私に預けてスヤスヤと目を閉じているのだ。

これを起こすような人間に、猫と暮らす資格はない。

しかし昼まで寝ている妻は、朝から起きて猫のご飯を作り、流しの皿を洗う夫と暮らす資格はあるのだろうか。

エル、起きてくれ。

君の方から起きてくれ。

気持ち良く目覚めてくれればいいのだ。私は頭を撫でてみた。

するとエルはう~~ん、と伸びた。

その時、脇の下の下に入っていた腕が脇の下の上に出て「前へならえ」の格好になり、今度はそのまま寝てしまった。

脇の下の上に、「前へならえ」の格好で挟まった天使が寝る。

何のテストですか、これはEE:AEB64

これを起こしてすぐに起きろなんて、無理な話である。

仕方ないので、あちこち撫でまくった。

可愛いから撫でるのである、起こしているのとは違う。

しかし、全く全然100%予想に反して、エルはなんと起きてしまった、なぜでしょう。

起きたエルは、今度はグルーミングである。

ザリザリと、ヤスリのような舌で顔を舐めまくる。

これを私は「天使の愛情表現」と解釈しているので、エルが自ら止めるまではやらせておくのだが、痛い。

同じ場所を舐められると擦りむけてしまうので、こっちで顔を動かしてあちこち散らすようにしなくてはならない。

愛されるのにも努力が要るのだ。

約5分。

今日はいつにも増して長かった。

ちゃんと計って、ダンナに自慢してやるべきであった。

さて、と体を起こそうと思ったところに、ちょうどダンナが現れた。

あまりにも遅いので、様子を見に来たのである。

つまりこの時間は「すっかり寝坊」の時間であった。ダヴィンチ、延期。

かくしてまた、太りそうな一日となる。