人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

変わらず自堕落、でもスペシャル

待ちに待った週末だ。

今週は平日の酒を控えたが、「酒が飲める」というだけで、何て心躍るのだろう。

人間、我慢あっての快楽である。

今日、ダンナは休日出勤であった。

休日出勤と言っても、午前中に害虫駆除の業者が入るのに立ち会うだけである。

せいぜい1、2時間で終わるというとで、新宿で待ち合わせてカレーを食べて来ることにした。

娘ぶー子が本格的に受験体制に入ったので、私達もフラフラ出歩く事を控えるようにしている。

本当ならウォーキングと組み合わせたかったのだが、しばらくは食べたら帰るだけの休日になるだろう。

それにしても、食い放題だ。食い過ぎた。

痛いほど苦しくなったが、カレーの味が濃かったので喉が渇く。

帰り道でジュースをガブ飲みしたが、これが余計お腹を苦しくした。

で、家に着いたら寝るわけだ。

6時過ぎにダンナがギターのレッスンから帰って来たので、目が覚めた。

晩ご飯の買い出しをしていない。

行かなくてはと思うのだが、眠いしかったるいし、動きたくない。

だいたい腹だってまだ減っていないのだ。

なので私は「買い物・・・。」と言ったきりソファに座ってボーッと固まっていたが、かったるいのはダンナも同じらしく、ソファで伸びてしまった。

「眠い・・・。」「かったるい・・・。」とふたり並んでソファにだらしなく伸びていたら、ちびエルがやってきた。

「エルだ!動いちゃダメ!!」

エルは抱っこが嫌いで、人の上で寝たりすることもあまりない。

あってもちょっと動いたり触ったりしただけでプイッといなくなってしまうので、細心の注意が必要なのだ。

私達は肩を並べて硬直していた。

エルはゆっくりその上を歩いてくる。

そしておもむろにダンナの胸の上で丸くなった。チクショー、そっちか。

「えう・・・♪」ダンナは満足げである。

しかしエルが乗ったことにより、身動きが取れなくなった訳だ。

「じゃ、買い物行こうか。」私は意地悪く声を掛ける。

「え?今は・・・、動けないよ・・・。」困っている。フフフ。

まぁいいや、まだ眠かったしちょうどいい。

スーパーの半額タイムにもちょっと早いしね。

しかしエルは突然スクッと立ち上がりまわりを見渡すと、私の腕の上に座りなおした。

最初に選ばれているだけに、ダンナの落胆もひとしおである。

「えう・・・(泣)」

ところがエルは上半身だけをダンナの腕に乗せ、寝る体制に入った。

これで皆、幸せである。

程なくしてダンナのイビキが聞こえてきた。

しかし凄いイビキである。

このところあまりイビキは聞いていなかったから、恐らくイビキが出やすいポーズだったのだろう。

顎を引いた状態であった。

その上電車で寝ている人のように、頭が規則正しくカクーンとこっちに流れてくる。

エルの頭上すぐのところでこのパフォーマンスは行われていたが、意外とエルは全然平気である。

私も少し寝たが、そろそろスーパーの値引きタイムが気になってきた。

まず、エルを起こす事にした。

強く撫でればすぐに「いやん」と逃げていくはずだが、ここで大切なのは「嫌われないように起こす」という事である。

せっかく珍しく胸の上で寝ているのだ。悪い思い出を作りたくない。

ところで私は、手に明太かまぼこを握っていた。

何でか忘れたが、とにかくそれを握ったまま寝ていたらしいのだ。

そこでそれをエルの鼻先に持っていくと、クンクンと鼻を動かしおもむろにガブッと噛み付いた。

一名様、お目覚めです。

ちなみにこのかまぼこは、ダンナが買ってきた未開封のものであった。

次はダンナだ。

ダンナはエルが起きたことには気付かず、まだ首を流しながらイビキをかいていた。

なので私はダンナの頬が流れてくると思われる場所に、人差し指を立てて待った。

カクーン。

思いのほか指は、ゆっくり刺さった。

しかしダンナはそれまでと変わらず頭を起こし、再びカクーンと私の指に向かってきた。

頬には私の爪の跡ががついている。

3度ほど繰り返した頃だろうか。

エルも相変わらず、かまぼこのにおいを嗅いではカプリ!と繰り返していたが、なんだか可笑しくなってしまい、クスッと笑ったらその声でやっと目を覚ました。

「ではエルにかまぼこを買ってきてあげましょう。」

そう言ってやっとスーパーに向かった。

夜の宴である。

人間、我慢あっての快楽だ。

いつにも増して楽しい週末である。