酒がやっと二日抜けた。
酒の夜は最高だが、酒のない翌朝もまた最高である。
何か悪い憑き物が落ちたかのように、私は生き生きと働くのであった。
なので、二度寝をしていない。
恥ずかしながら、何日ぶりか。
酒を抜いたからって早く寝ている訳ではないので、寝不足になっているはずである。
しかし、情熱を持って行動していれば、眠気など寄り付きはしない。
情熱を持って掃除をする。
情熱を持って洗濯物をたたむ。
情熱を持ってゲームをする。あ、バレたか。
まぁ朝の早い時間にちょこっとゲームをしたお陰で、目がしっかり覚めたのである。
バカとゲームは使いようだ。
そして、情熱的に動いたお陰で午前中も午後の仕事中も、全く眠くなりはしなかった。
情熱を持って家事に勤しみ、情熱を持って仕事に勤しむ。
ところでどうやら情熱とは、車の燃料や時計の電池のように、容量があるらしい。
仕事を終えて家に帰りつくと、私のタンクは空っぽになっていた。
やはり燃料の切れた猫達がご飯を催促するので辛うじて出したが、ソファに座ると目を閉じるまでもなく眠気がやってきた。
ヤバい、奴らマジだ、これは凄い勢いである。
まともに戦いたくなかったので、すぐに風呂に入った。
動け動け。
情熱は果てても上っ面だけ動いていれば、ヤツらは騙されるだろう。
ところが私は風呂場で初めての経験をした。
湯船で寝てしまったのである。
これまで風呂で眠くなった事はなくもなかったが、息苦しくて眠るまでには至らなかった。
私はカックンカックン頭を揺らしながらも、新鮮な驚きを感じていた。
おー、本当に頑張って疲れた人みたいだ。
風呂から出ると、いくらかスッキリした感じになっていた。
うーん、いちいちすがすがしい1日である。
体をバスタオルでゴシゴシと拭く。
ちょっとでも水滴を残したままパジャマを着ると、不快極まりないのだ。
念入りに拭く。
すると、ピンポーン♪とインターホンが鳴った。
い?自分、素っ裸ですが。
私はそれが誰かはすぐに思い当たった。
昨日宅急便の不在票が入っていたが、そのまま連絡をしていなかったのである。
どうしよう、生ものの可能性があるのだ。
2度も無視するのはさすがに気が引けるし、などどゆっくり考えてもいられないので、とっさに返事をしてしまった。もう出るしかない。
先ほどパジャマ、と書いたが、正確にはパジャマ代わりにしている服である。
寒いので下はスパッツとジャージ、上はTシャツとパーカーだ。
それにパンツを足すと計4枚だが、そんな余裕はない。
しかし幸か不幸か、下の2枚は横着して脱いだので、合体している。
Tシャツを着なければ3枚だ、急げ!!
ところが慌てて穿こうとしたので、足先がジャージの中のスパッツの出口を探し出せず、つま先に裾をひっかけたままタイツ状態になってしまい、先に進まない。
こういうのは本当にイライラする。
こういうときは落ち着いて穿くべきなのだろうが、私の場合たいてい強行突破である。
破れなくて良かった。伸びたが。
宅急便で送られてきたのは、ワインであった。
生ものではない。スルーすれば良かった。
私は昔宅急便の配達の助手をしていた時期があったが、頭にタオルを巻いてバスタオルを矢沢掛けした受取人に会った事はない。
体をきちんと拭けなかったので、あちこちがヒヤヒヤして気持ちが悪かった。
次には生ものが届くはずだが、不在票にはちゃんと折り返し連絡をすることにしよう。