人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

30人の探偵へ

ダンナは何をするでもなくテレビを見て、私はゲームに熱中する。

いつもの風景でこれまで通りなのだが、「ネットゲーム」というだけでどうしてこんなに肩身が狭くなるのだろうか?

そこには「アイツとつき合うと不良になる」という類と似たようなレッテルがあるように思われるが、これはゲーマー側の言い分なのかもしれない。

一種の新興宗教のようなものであり、私はもうズッポリそこにハマッているのかもしれないのだ。

なので少なからず後ろめたい気持ちがあり、私は家の事をおざなりにしないようにこれでも気を使っている。

それが形として見えないのは二度寝が邪魔をしているからで、私は常に時間が足りずに忙しい思いをしているのだが、それもゲームのせいになってる気がしてならない。

違うんだよ!!

何でもアイツのせいにしないでおくれよ!!

そんなに悪いヤツじゃないんだよ!!

しかし午前中二度寝しているのは事実であり、それを自分の責任だという事を見せるために、今日はちょっと大型の家事に着手した。

音楽室の掃除である。

現在この部屋を一番使っているのは私だが、ダンナがこの部屋を大変愛している事を私は知っている。

音楽のためだけにある部屋。

インテリアにも気を配り、美観を損ねるものは一切置かないようにしていたのだが、それが今や物置である。

私は物置だとかゴミ屋敷だとかいうものを恐れていないのでそこで平気でピアノを弾いているが、恐らく彼はウンザリしていることだろう。

彼の愛する彼の城がこんな状態になっている事に。

そこで私がこの部屋をきれいにしちゃうのだ。

水質が良くなった川に魚が戻ってくるように、ダンナも喜んで戻ってくるだろう。

そうすればボケ老人のようにテレビをボーッと見るような事もなくなり、私にも感謝して不良との交際を少し認めてくれるかもしれない。

私は時々家事の優先順位を、こうした計算で前後させる事がある。

生きている人間が、生きている人間のために、生きている家事をするのだ。

う~ん、私は生きている。

しかし、ピアノを弾くために入ると何とも思わない部屋だが、片付けようとすると本当にウンザリする部屋である。

そもそもここに置いてあるものは「どこにも置く場所がない」「使い道がない」と、ここを終着駅にして置かれているのだ。

時間が経ったからと言って、行き先が勝手に決まるものではない。

ダンナが100均でポンポン買うために、すぐに必要なくなってしまうもの。

セールストークに乗せられて衝動買いしたワックス。

いつか時間ができたら使おうと思っているインテリアグッズ。

最低なのは、娘ぶー子がまとめて出した不用品だ。

福袋に入っていたものやオマケが多く、どれも新品なのだが、致命的に使えない。

可愛くないキーホルダー、あり得ない形のネックレス、灰色のバンダナ。

カールおじさんの大型ハンカチを見た時に、これはもう今日片付く事はないことを悟った。

使わないものを捨てられれば話は早いのだが、私はどうしても「まだ使えるもの」は捨てられない。

猫が好きだったり、NOと言えなかったりするとの同じ、これは性分なのだ。そう簡単に変えられない。

今ここ、パソコンの横にも、使うあてのないミニアルバムと、2005年のスケジュール帳と、システム手帳のカバーだけというものが置いてある。

全部ぶー子の不用品から救い出したものだが、「ぱんだ探偵事務所」というキャラクターモノのメモは救いがたい。

厚さ1センチはあるものだが、中は「探偵免許」「依頼書」「はりこみ日記」「事件メモ」「マル秘お手紙」「事件ファイル」と項目が分かれていて、全てその仕様になっている。

ただの無地やちょっとした柄ならメモとして使えるが、書き込めるように探偵免許や事件ファイルがあらかじめ印刷しているので、どうしようもない。

これを使い切るには30人に適性テスト(免許の下に付いている)を受けさせて免許を発行し、30件の調査の以来を受け、張り込み日記を30日分書き、30件の事件メモを取り、30通マル秘の手紙を送り、30件の事件ファイルを作らなくてはならない。

それなのに、ここに置いてあるのだ。

どうしたって部屋が片付かない訳である。

下らないキーホルダーやメモが欲しい人、あげます。

送料だけヨロシクです。