歯医者が終ると、ダンナとの待ち合わせである。
吉祥寺でラーメンを食べる予定だったのだが、昨日は娘ぶー子が泊まりに行っていなかったのだ。
夜遊びのチャンスである。
地元・久米川で飲む事にした。
なので待ち合わせは久米川である。
ちょうど歯医者を出たあたりで、ダンナも仕事が終って会社を出たとメールが来ていた。
ぽ子→西荻窪。
ダンナ→虎ノ門。
待ち合わせは久米川だ。
きっと私の方が先に着いてしまうだろう。
と言うことに歩きながら気付いたので、すこし西荻で時間をつぶす事にした。
遠回りになったが、「陳さんの麻婆豆腐」を売ってるスーパーへ。
これでだいたいバランスが取れたんじゃないか?
ぽ子はゆっくりめにバス停に向かう。
途中にある商店街のアーケードを通って行った。
人もまばらな地味な商店街である。
洋服屋の売り物がたくさんハンガーにかかっていたが、パッとしない服ばかりである。
興味はなかったが、時間つぶしも兼ねて見てみた。
すると可愛いスカート発見。
茶色いチェックのふわふわスカートだ。
しかしペナンペナン。
私が値段を付けるとしたら500円で充分だ。
それが2000円。
ケッ。
でもとても可愛いのだ。
見た目に対しては高いが、世の中のスカートの相場からいえば安い。
迷った。
ぽ子はスカートが欲しかったのだ。
しかし問題がもうひとつあった。
ダンナがミニスカートを嫌がるのだ。
「俺のぽ子の足を誰にも見せるな」と言うのではない。
ぽ子は足のしまりが悪くだらしがないので、許可が下りないのだ。
で、このスカートはどうだ?
ギリギリ膝上である。
これはミニと言わないだろうが、そういったモノサシは人それぞれである。
案外こんなんでも「短い」と言いかねないぞ、ダンナは。
あるジャンルに関して時々、驚く程封建的な時があるのだ。
結局買わなかった。
だいたいスカートと言うものは、太って見えるのだ。
そこを本当に太っている人間がはくのだから、ごまかしがきかない。
ダンナも嫌な顔をするかもしれないし、2000円では高い。
私はバス停に向かって再び歩き出した。
バス停手前のスクランブル交差点で、信号が青に変わるのを待っていたが、目の前には上石神井行きのバスがすでに来て停まっていた。
ちょうどいいタイミングだが、スクランブル交差点は待ち時間が長い。
バス、行くな、行くなよ・・・。
私は祈るように見ていたが、その時頭の中で何かが切り替わり、バスに背中を向けて歩き出した。
戻ったのだ、先程のスカートの元へ。
私は今度は迷わずにそれを手に取り、レジへ向かった。
売り主は年配の女性であった。
地味な店である。
結局、いいんだか悪いんだかわからない2000円のスカートを買ってバス停に戻ると、バスはいなくなっていた。
仕方なくバス停の先頭に並んだが、今度は同じ店にあった1000円のオーバーオールが気になってきた。
バスが来るまではまだまだ時間があるだろう。
でももう1回あそこに行って、今度は1000円の服を買うなんて恥ずかしいなぁ。
諦めた。
しかしその大きな理由は、2000円と1000円を足すと3000円だったからである。
一度に3000円分も服を買うなんて、地獄に落ちてしまう。
じゃなくてもあんなヒラヒラのスカートを穿いたら、地獄に落とされるのではないか?
早速後悔し始めたが、もう遅い。
バスに乗ったところでダンナが新宿に着いたとメールをよこした。
これならちょうどいい感じにふたりとも久米川に着きそうだ。
そして、ダンナは拝島行きの急行に乗った。
私が上石神井に着くと、拝島行きの急行が来た。
何と、同じ電車である。
面白いので私はそれを黙っていた。
小平で乗り換えるときに見つけ出して驚かそう。
「今どこ?俺は上石神井を出たところ。」
ぽ子もここ。上石神井を出たところ。と心の中で言い、メールの返事は「まだバス」と送っておいた。
すると次の田無に着く寸前に、「じゃあ田無で降りて待ってるから、電車に乗ったら何行きに乗ったか教えてね」とメールが来た。
ちょ、ちょっと待ったッ!!降りんでいい!!ぽ子、ここにいる!!
「降りないで!!ごめん、一緒の電車にいる!!」と急いでメールを返したが、間に合ったのかどうか。
電車は田無に着いたが、私はどっちにいたらいいのか?
メールが間に合って降りなかった方に賭けた。
電車が動き出す。
「もう降りちゃった・・・。遅かったよ・・・。」
すぐにダンナからメールが来た。お別れである。
今度は次の駅で私が降りて、ダンナを待った。
こんな事ばかりである。
サプライズを狙って迷惑をかけるのは、ぽ子の特技と言ってもいい。
機転の利かない人間は、余計な思いつきに従わない方がいいのだ。
久米川では、大好きな「わたみん家」で飲んだ。
結局ふたりでボトルを空けるまで飲んでしまい、家での二次会はなかった。
そんな夜だった。
スカートはまだ丸めて袋に入ったままである。
我らが久米川の駅前。精一杯のクリスマス。