人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

潮干狩りの巻

「出発は5時半。」

前の晩にダンナがそう言い渡した。

朝の5時半だ。

「5時半ッ!?」

私と娘ぶー子が悲鳴のような声を上げたが、潮の関係で受付時間が早くなっているらしい。

致し方ない。

ダンナの会社の健康保険組合の方で毎年招待してくれるのだが、

「今年はぶー子はどうかねぇ。」

潮干狩りだよ・・・?」

「もう来ないか・・・。」

と、頭数にいれないつもりで一応、聞くだけ聞いてみた。

「おっしゃ、はまぐりゲットだぜ!!」

ええっ!?そうですか!?

ちなみに前回も来ないと思いながら一応声を掛けたのだが、「おっしゃ、大量ゲットだぜ!!」と呆気なくついてきた。

わからないものだ。

千葉方面、久しぶりである。

ビルの谷間の首都高を走る。

遠く朝もやに霞む高層ビルが幻想的で、思わず息を飲む。

流れているのはレニー・クラヴイッツの切ない調べである。

「これは・・・。」

「もうエンディングの雰囲気じゃん・・・。」

レニー・クラヴィッツは朝聴いてはいけない。

早くも1日、終わろうとしているじゃないか。

次に聴いたのはDEPAPEPEの美しいギターの調べだが、これでやっと朝になった。

順番、間違えたな。

それにしても、ダンナはもうBGMを選ぶ権利を諦めてしまっているようだ。

私がその隙を与えないからだが、それによって今回のBGMはこのDEPAPEPE以外はずっとレニクラであった。

「朝」、もしくは「エンディング」。ザッツオール。

「こちら、どうぞ。」

健保の受付でもらった黄色い網は、とても小さな網だった。

「小さ・・・。」

一人この網1つ分は無料と言うことだが、小さいのー。

ところが潮干狩り場入り口で配っていた青い網はそれよりずっと大きかったので、それをもらって入れる事にした。

ところがだ。

掘れども掘れども殻ばかりで、なかなか肝心なあさりが出てこない。

あちこちにポイントを変えて掘ってみるが、大きな青い網には3つばかりのあさり。

落胆してダンナのところに戻ると、ぶー子もそこにいて、

「ちょっと今、あさりの神が降りてるから!!」と夢中になって掘っていた。

見るとダンナも「ほら出た!!3つも出た!!」と、どうやら入れ食い状態の様子。

私も神の降臨したその場に座り込み、熊手を握りなおした。

「もう・・・こんなにあっても・・・。」

最初にビビり出したのは、今回もダンナであった。A型山羊座、常に冷静である。車の運転を除いて。

掘っても掘っても出てくるので、止められないのだ。猫のブラッシングと同じである。

女2人は欲深く、ダンナの静止でやっと我に返ったが、どう考えても健保の言う「ひとり1kg(×3人)」では納まっていない。

その大量のあさりを持って出口に向かうが、「700円です。」などと言われ、みんなお金を払っていく。

このまま青い網に入れて出したら、私達も全額払うことになりそうな予感。

「黄色い網に移そう!!」

私達は出口に背を向けて、慌てて黄色い網にあさりを移し始めた。

しかし先に書いたように、青い網と黄色い網では大きさが全然違うのだ。

しかし入れた。無理矢理入れた。

口は大きく開き、左右に揺らせば中のあさりがこぼれんばかりであったが、とりあえず形だけは入れた。

「黄色い網の方は、そのままお帰り下さい。」

それでも計測もなく、出口はスルーだった。

ええっ!?いいの!?軽く5kgは超えているはずだが。

「来年も来よう♪」

大量のあさりをクーラーボックスに入れ、私達は次に、TDL、つまり東京ディズニーランドに向かうのであった。