MDをカーステレオに突っ込んでみた。
タイトルが書いてないので誰のアルバムかわからないのだが、「これは何だ?」軽い気持ちで聴いてみたら、それはヴァン・ヘイレンの「1984」であった。
「1982」か?
いやもっと古いか、とにかく年号がタイトルの、天使のジャケットのヤツだ。
何度か聴いた事があるが、毎度1枚聴ききらずに飽きてしまう。
別に悪い曲でもないのだが、1枚通して聴くにはちょっと根性がいるアルバムである。
ぶっちゃけ「Jump」以外、全部B面(今でいうとカップリングか)的な存在感である。
まぁハードロックのギターバンドだ。
リードギターのエドワード・ヴァン・ヘイレンは、その高いテクニックで当時あまりにも有名であったが、そこで素朴な疑問が湧いてきた。
「私がこれ弾けるまで、何年かかる??」
ダンナからギターを習うと決めて1週間。
しかし実は左手を痛めて延期していた。
明日から練習したいから、今日あたり、課題を出してもらおうと思っていたところである。
「棺桶に楽譜、入れてあげます。」
これまでもレッスンを決意してから、「この曲まで何ヶ月??」「これ、すぐ弾ける??」と何度も質問してきたが、さすがはエドワード・ヴァン・ヘイレン、最長であった。
ところでダンナは、彼の「タコ足奏法」について語ってくれたが、正しくは「エイトフィンガー」であった。私をバカにしている。
で、指は10本あるのに、なぜ8本でそんなに有名になれるのか、なぜ彼は「テンフィンガー」にしなかったのか、不思議である。
「あのね?左手の親指、いらないでしょ!?」
「右手の小指なんてほとんど使わないでしょ!?」
知りませんて。
それを使うからこそ、神なのではないか。
私が納得いくまで、何年かかるだろうか。
「じゃ、始めようか。」
ラーメン屋から戻ると、ダンナは音楽室に向かおうとした。
「え?ビールは??」
「酒とギターは切り離して下さい。」ダンナは毅然として言った。
なんだぁ、ダラダラ飲みながら楽しくやろうと思ってたのに。
「じゃあまずチューニングの仕方から。」
げえ、めんどくさ。
毎朝ダンナが出勤する前にチューニングしてってくれと言ってあったのだが。
ギターは6本の弦を持つ楽器だが、それぞれの弦の音程をきちんと合わせてから弾かないと、曲が成り立たないのである。
ピアノのように、いつでもドレミとはいかないのだ。
しかし厄介な事に、1弦から3弦と、4弦から6弦で、チューニングの仕方が逆になっているのだ。
具体的に言うと、弦を巻いているネジで音程を変えるのだが、そのネジを回す方向が逆なのだ。
しかしその法則をすぐに忘れる。
その上、チューニングしている弦と回すネジを間違えて、一度合わせた音を何度も狂わせてしまった。
どえらい時間がかかったが、全部終わったところで、「じゃ、もう1回最初からやってって。」とダンナ。
もういいです、覚えました。これだけやれば充分です。
「いや、多分狂ってるはずだから。」
ええっ!?あんなに苦労して合わせたのに。
半信半疑でもう一度5弦をはじくと、ガーン、本当に狂っていた。
弦を巻いていくと、だんだん狂うらしい。
「ドレミファソラシドレミファソラソファミレドシラソファミレドシラソファミ」
以上。
これだけを、ただこれだけを、ひたすら繰り返した。
指と押さえる位置が決まっている。
簡単な作業ではない。
まず、左手は上から見下ろすようなアングルになるのだが、だんだんどの弦を押さえているのかわからなくなってくるのだ。
なので突然隣の弦を押さえたりして音が出なくなったりする。
一方右手の方も、こちらは全然見ていないので、左手以上に勝手な弦を弾いてしまう。
中途半端にベースをやっていたために、その感覚の違いも辛い。
「ドレミベチンポムポムポム」
そんな音を聞きながら、ダンナは退屈そうに、時々「ベイン」「ビヨン」と私の音色の揚げ足を取った。
また、「エルゥ♪」などと、遠くにいるエルに手を振ったりして、まるで集中していない。
私に向かって「あほう♪」とまで言った。
「今、こっち聞いてないで、エルにバイバイしてたでしょッ!!」と言うと、
「バイバイじゃない!!こんにちはだッ!!」と開き直る。
まあ私がものすごく下手なのだから仕方ないのだ。
これから次の週末までに、練習してあっと言わせてみせる。
ところで私は、初心者としてこのギターの構造にかなり不満があった。
なので、「こんなギターがあったらいいのに」というものを考えた。
まず、弦の色を全て変える。
弦と弦の間隔をもっと広くする。
1フレットから5フレットが遠すぎるので、ひとつひとつのフレットを短くする。
弦を巻いているネジ(ペグと言うらしい)を1列にして、みんな同じ方向に回るようにする。
ついでに初心者用のセットとして、左腕のひじが脇にくっつかないようなつっかえ棒的固定器具と、集中するあまりに口がポカンと開いてヨダレがたれてもいいようなマスクをセットにすると良いだろう。
口ポカダラリはダンナでもあるらしいから、笑い事ではない。
しかしおもしろかった。
来週また笑うために、頑張っていこうと思う。