金曜日だ。
しかも今日は仕事が午前で終わり。
これはやっほ~~!!というより他ないが、残念な事に花粉により半やっほ~~!!ぐらいだ。
これから食事に出るが、どうせ飲めば鼻が詰まって食事も酒も台無しだろう。
しかし飲まないと、せっかくの金曜日が台無しになる。
花粉め!!花粉め!!
いつも仕事が始まる時間に、家に帰って来た。
何てたくさん時間があるのでしょう。
もうけ、と思ったが、実は別にもうけてはいない。
午前と午後がちょっぴり入れ替わっただけで、本来午前中にやっていた家事をしなくてはならないのだ。
しかし2時には寝ていた。
昨日は良く寝たはずだが、食後の睡魔に勝てなかったのだ。
まぁ夜の部のための休息だ。やっと金曜日が来たんじゃないか。
口を全開にして寝ていた。
というか、口を全開にしていたために、何度も目が覚めた。
口の中がカピカピに乾いて、不快なのだ。
想像して欲しい。
舌を触ってみると、乾いているのだ。
口の中は、乾いているべき場所ではない。
私はこの花粉症になるまで、一度たりともこんなに口の中が乾いたことはなかった。
つまり花粉症でない人は、一度も経験した事のない状態と言う事だ。
その人が仮に80歳だとすると、80年間一度も経験したことのない状態になっていると言う事になる。
1年365日×80で約29200日も生きてきて、一度も経験していない状態だ。
どれほどレアか、あぁどうでも良かった、花粉め、思考力まで侵してきやがる。
今夜のために、何か服をみつくろって貸してくれ、と娘ぶー子に頼んでみた。
彼女は意外とこういった事に世話を焼くのが好きなので、気持ち良く貸してくれるので助かる。
ぶー子のクローゼットの中身は私のものでもあるのだ。ハッハッハ、ぶー子よ、もっと服を買うが良い。
「普段着ないような女らしい服を。」とリクエストしてみた。
「そうだなぁ・・・。」と言ってぶー子が出したのは、膝上までくる長いピタッとしたニットのワンピ、その下に大きなフリルのついた長いシャツ、レギンス、もの凄く短いパンツ。
まぁパンツが短くても、ニットのワンピで隠れてしまうだろう。
足はレギンスで隠れるから良し、私は礼を言って、寝室で着替えてみた。
嫌な予感はしたが、何か変だ。
そのままぶー子の部屋に行くと、ぶー子は口を歪ませ、笑っているような、蔑んでいるような、微妙な表情でこちらを見た。
分かったのは、失敗したらしい、という事だ。
「やめやめ。」と言って、寝転んでいたぶー子は起き上がって、クローゼットに向かった。
「全とっかえ?」と聞くと、「全とっかえ。」と答えた。
全部が失敗なのだ。
いいと思って貸した服が、私が着ただけで全部失敗となったのだ。
「女らしい服を・・・。」私はまだそこにしがみついていた。
今日はホワイトデーなのだ。ここで女を見せないでどうする。
次にぶー子が出したのは黒いタートルネックの長袖で、先程の大きなフリルが裾についた袖のない服との重ね着だ。
どちらもピチッと体にフィットした薄手のものだが、これを着た私を見てぶー子は絶句した。
さっきの服もそうだが、つまり私のボディラインが美しくないため、もっとハッキリ言うとハラが出ているため、着こなせていないのだ。
その証拠に、次にぶー子が出した服はチュニックだった。
チュニック。
この、子供が幼稚園で着るスモックのように裾の広がったヒラヒラした服は、とてもはやっていて誰しも着ている今日この頃だ。
しかし私はヒラヒラした服が嫌いなのと、みんなが着すぎているのとで、これまで頑なに着ないできたのだった。
しかし、「これはハラを隠すのにいいんだよ。」とぶー子は言い、グリーンのチュニックを出して他の服をしまった。
ついにチュニックか・・・。
ヒラヒラして気持ち悪いんだよ、ぽ子が!!
しかし着てみると、着ごごちもいいし、見事にボディラインも隠れる。
こうしてチュニックデビューとなった。
何だかその他大勢になった感じでまだ抵抗はあるが、かわいらしいわねぇ♪と、意外と気に入ったぽ子であった。