「これに合う服を貸して欲しいんだけど。」
今夜は、あらかじめ予約してあったレストランで、ダンナと食事をする事になっていた。
こんな日でもないと、Tシャツ以外の服を着る機会がない。
私は買ったばかりの新しい服を着て行く事にしたのだが、それに合う、いわゆる「ボトムズ」がなかったのである。
珍しく娘ぶー子がいたので、適当に借りることにした。
「それならあのクラッシュジーンズがいいよ。」
「あのクラッシュジーンズ」ですぐ分かったのは、最近ぶー子が気に入ってよく穿いていたからである。
ちなみにクラッシュジーンズとは、わざとビリビリに破いたりしてある可哀相なジーパンの事である。
「そりゃいいけど、ウェストは大丈夫かね??」
私とぶー子は体系が似ているのであまり心配はしていなかったが、スキニーである、結構シビアな問題だ。
「よゆー、よゆー。絶対ダイジョブ。」
ま、そうだよな、ぶー子の服が入らない訳がない。
入らねえ(笑)
そもそもピチピチで腰まで上げるのに難儀したが、洗いたての干したての乾きたてで、一番キツい年頃である。こんなこともあろう。
しかしいざファスナーを閉める段階になって、原因はそこではないことが明らかになった。
「ちょー、これEE:AEB64」
ファスナーの上のボタンとボタンホールは、まるで磁石のN極同士が反発しあうように顔を背けていた。
ファスナーを上げるまでもなく、無理は明らかである。
しかしぶー子は「ほらほらほらほらっ。」と強引にボタンを閉めようとした。
無理だっつの、それを無理に引っ張ってくるのがおかしくて、腹が揺れる。
「オラッ!!」
しかしぶー子は見事に腹をジーンズに入れた。
入ったか。
入っただけである。
ジーンズの上部からは、色んなものがはみ出している。
このジーンズは「クラッシュ」「スキニー」「超ローライズ」というオバハン泣かせのものであった。
股上の浅さから、下に穿いているパンツが大きくはみ出していた。しかも斜めに。
その上からは腹がはみ出していた。
その無様さがおかしくて「これ見てこれ!!」とウケを狙ったが、ぶー子は笑わなかった。
「いいからいいから、その上にこれ着ちゃえばわからないから。」と平然と言ったが、もう一度「これ見て」と腹を見せたら、一瞬戸惑ってから、ブフッと吹き出した。
我慢してたんだねEE:AEB64
ぶー子の言うように、上にはポンチョのような服を着るので腹は隠れる。
しかしそのポンチョはシースルーなので、何かを下に着なくてはならない。
それもぶー子から黒いキャミソールを借りたが、これがまた、寸足らずである。
よって、私の腹はローライズのジーンズと寸足らずのキャミソールの間からはみ出すのである。
「大丈夫、全然分からない。」
しかしぶー子はそう太鼓判を押したので、時間がない事もあり、私はその格好で出かけたのだった。
して、食べたのはバイキングである。
私の腹がへこむ予定は、今のところ、ない。