ケンカの余韻でまだまともに顔を合わせてなかった。
晩ご飯に下りて来た娘ぶー子は、見た事のないスティッチの大きなぬいぐるみを抱いていた。
気まずいままだったので私はぶー子に背を向けてブログの更新作業をしていたが、後ろで話しているダンナとぶー子の会話がどうしても聞こえてきてしまう。
と言うか、ぶー子が泣き出したのだ。いやでも話が耳に入る。
トリプルデートだった。
デートといってもカップルになっている組はなく、「あそこのふたり、くっつけちゃおうぜ。」なデートだったらしいのだが、
ぶー子の好きな人は違う子を狙っているようで、ぶー子はそのふたりをくっつける役まわりになってしまったのだ。
彼のために、何かと彼女とのきっかけを作り、近づける。
そんな彼のぶー子への気持ちは「お前、ほんといいヤツだよな。」である。
ぶー子は「それでも『いいヤツ』だって言われたくて・・・。」と泣き崩れる。
ぶー子は延々泣いている。
私は我慢できなくなって、ケンカで気まずいのも忘れ、口を挟んでしまった。
そこからは家族3人体制である。
トリプルデート、と言うことは3組である。
二組は「くっつけちまおうぜ」のカップルで、その仲間の男の子が一人来たので、おのずとぶー子がその子とペアになる。
「ごっちん」と呼ばれるその子はとてもいい子らしいのだが、まぁ、なんて言うか、よくある3枚目キャラの、ハッキリいうと「いい子だけどしゃれっ気のないおデブちゃん」らしい。
ぶー子は彼が気になって気が気じゃない。
しかしごっちんとふたり並んで歩く。
ぶー子は泣きながら言う。
「ごっちんはさ、ごっちんはいいヤツだけどさ、こんな事いったら何だけどぉ・・・、」泣きながらだから聞き取るのも難しい。ヨヨヨ(泣)、という感じで喋るのだ。
「小学生や中学生の着るようなさ、なんか羽とロゴとか書いてあるトレーナーなんか着てさ、その上にさ、(声裏返りそうに)白いコートなんか着てきて、もう~~~!!」
最後の方はもう泣きながら笑っていた。
恐らく返答に困ったのであろうダンナは、「そのコートってロングコートなの?」と突拍子もない質問をしたが、ぶー子はヨヨと泣きながら
「わかんない、ロングコートなのかもしれないけど、デブだから短くなってたぁ(泣)」と答えた。
ぶー子はこの日のために買った、レースのついた花柄のワンピを着ていた。
ファーのついたニットの黒い帽子を被り、薄くチェックの入ったストッキングをはいてめかし込んでいた。
その姿で、彼がクレーンゲームで取ってくれた(このひとつだけぶー子にくれたらしいのだ)スティッチの大きなぬいぐるみを抱いて、オイオイと泣き続けている。
こんなぶー子に、いつか恋が実る事を祈る。