人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

天然おばけ屋敷

今回の旅行で「松代象山地下壕」に行くことになっていた。

ダンナが出張でよく長野に行くので、その時連れて行ってもらったらしい。

戦争中に掘った壕だとかでうん、ちょっと興味あるぞ。

娘ぶー子には「本物のおばけ屋敷に行く。」とビビらせておいた。

効果はあったが行くのをしぶり出したので程ほどにしておく。

ところでこの「松代象山地下壕」についてちょっと説明をしておきます。

第二次世界大戦末期に本土決戦最後の拠点とするために、この大きな壕は掘られました。

この壕は碁盤の目のように掘られ、その延長は10kmに及ぶとか。

見学できるのは延長500mの区間のみ。

今回泊まった戸隠は涼しかったけど、この長野市は暑かった。

壕の中は寒いくらいだと言うので「早く早く」とはやる気持ちで入っていった。

う~ん、ほんとだ、涼しい。

お~、いかにも「壕」って感じだ。

・・・・・。

・・・・・。

ちょっと・・・・・。

ウチらの他には誰もいない。

最初の角を曲がるとただひたすらまっすぐに壕が伸びている。

変化も何もない。

ただまっすぐの狭いトンネルだ。

薄暗く、上から水がしたたっていて、足元は濡れている。

「この防空壕で死んだ人とかいるの?」

ぶー子がダンナに聞いた時、

「防空壕じゃないって。単なる地下壕だけど、実際には使われなかったらしいよ。」

そう答えていた。そして、

「ただ、作るときに相当な犠牲者が出たらしいよ。」

そう言ったのだ。

オーマイガッ。思い出してしまった。

そういえば入り口に慰霊碑があった。

「怖い」という言葉は忘れたほうがよさそうだ。

私は別に単なる地下壕の見学をしてるんですけど?

単なる地下壕、単なる地下壕・・・。

普通を装っているつもりだったが、やはり挙動がおかしいらしい。

「頼むからもっとリラックスして見てよ。」とダンナに言われる。

後ろが怖い。

前も怖い。

でもやっぱり後ろの方が怖いので、前を歩き、ダンナに後ろを歩いてもらう。

「気もち悪い・・・。」

「肩が重い・・・。」

心霊スペシャルだと次に起こる現象はこうだ。

知らん、知らん、これは見学だ。

超怖い。もうごまかせない。いやだ、帰りたい。

「あとどれ位?」

「まだまだだよ。突き当たったら今度左に曲がるから。」

突き当たりはまだ見えない。

「・・・戻らない・・・?」

もしかしてぶー子もビビッてくれてないか、もしくは単調なので飽きてないかと期待したが

「はぁっ!?」

ふたり揃って「あり得ない」というリアクションだった。

仕方なく足元だけ見て前に進む。

時々左右に道が伸びていて入れないようにフェンスが張ってあるんだけど、

先がライトで照らされてないのでこれがまた怖い。

あ!

前方に人発見。

始めは私にしか見えない人影だったらどうしようかと思ったが、どうやら見学の人だったようだ。

嬉しい。超嬉しい。大げさではない。本当に嬉しかった。

心なしか足が速くなる。

その人達がいたのは曲がり角の手前だ。

「この先どうなってるの?」

「俺も行ったことないからわかんない。」

え~・・・。やめようよ・・・。

「行こうよ、せっかく来たのにもったいないじゃん。」

ぶー子、アンタ、何てことを・・・。

「嫌だ。戻りたい。」

絶対に嫌だ。何がしたいんだ、何が言いたいんだ、何の嫌がらせだ。

でも私は1人では戻れないのだ。

1人で戻るか、3人で先に進むか。

私は泣く泣く先に進んだ。

・・・何もありゃしない。

怖い時間が長くなっただけだ。

戻る途中で団体のグループに出会った。

この安心感、わかって頂けるでしょうか。

しかし彼らはこちらに向かって来ていたのですれ違ってサヨナラだ。

帰りはもうただ早く出たいのみだったのでズンズン歩いた。

足だけ見て歩いていたので頭がだんだんフラフラしてきて気持ち悪くなってきた。

「まさか・・・お持ち帰り・・・?」

霊媒師の下師が浮かぶ。

コネがあるんだったら、その暁にはあの方にお願いしたいものだ。

怖かった。

本当に怖かった。

これからはもうちょっと慎重に穴だとか暗いところに入ろうと思う。