人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

巻き髪

髪を、伸ばしている。

 

ロングスタイルにしたい、という理由ではない。ライブがあるからだ。やはりハードロックはロングでいきたいところである。ライブのために、伸ばしているのだ。

 

今、肩より少し長くなったところで、そもそもボブスタイルだったものが、そのまま伸びて何の変哲もないセミロングとなっている。

なんとも垢抜けない。

そして私は頬骨が出ているので、似合わないのである。

いっそ後ろにひっ詰めた方がまだ清潔感があっていいので、ゴムで結わくことにしたのだ。

 

まぁそれでも垢抜けん。

結わくには中途半端な髪が、ゴムから下に束になっている。

何とかならないものか、ネットで「セミロング アレンジ」など検索してみた。

すると、巻き髪がたくさん上がってるじゃないか。なるほど、巻き髪。結わくだけにしても、巻いてあるだけで華やかさが出る。

ぶっつけ本番で家を出ると失敗した時に困るから、家で少し練習しておこう。

こうして入浴後、髪を乾かす時に、巻いてみることにしたのである。

  

いつもはこれで毛先だけ軽く巻いていたところを、ギリギリ根本の方まで巻いていく。

慣れないので、難しい。思ったようなウェーブにならない。

悪戦苦闘していると、「ん??」。

髪を巻いたまま、急にブラシが動かなくなった。

引っ張っても緩めてもダメ、どうやら絡まったらしい。

   

そういえばブラシを買った時に、袋に「巻き過ぎるな」みたいなことがかいてあったような。確かに時々引っかかることはあった。むしろそのせいで、ナメていたのである。引っかかってもすぐ取れると。

 

ネットで調べてみると、割と良くあることのようだが、これは結構厳しい状態であることが分かった。

「助けて欲しい」という相談への回答はどれも功を奏しておらず、結局美容院へ行くか切るかグシャグシャになって取れるか、というところだ。私は馴染みの床屋さんに行くことにした。

 

連絡もなしに行くと、接客中の店主は爆笑した。

最後のお客さんだったのですぐに取り掛かって貰えたが、櫛の先の細い部分で少しずつ掻き出すようにしてほぐし、なかなか大変そうであった。こりゃ自分じゃ無理だ。こうなったら美容院に行くように!

こうして、

    

これが取れて、

    

こうなって。

あれ?悪くないじゃん!巻けてるよ。これはこれで成功じゃない??と私が言うと、

「貴様に本当の巻き髪というものを見せてやる」と言わんばかりに、ちゃんとコテで巻いてくれたのだ。

  

おお!!

取れなくなったブラシを取って貰ったら、パーティ仕様になって帰るという!!

このまま帰るだけではもったいない。駅前の飲み屋に繰り出してあわよくば誰かに会えないかと思ったが、まだ木曜日だ。そして明日の金曜日は飲む予定だ。

ダンナだけに堪能させるという贅沢を味わわせてやろう。

 

晩ご飯を作る時間がなかったので、ハンバーガーを買ってDVDを観た。

ダンナは気づいたのかどうか、ひと言もこの髪について触れなかったのだ。

久米川に出るべきだったか。

 

 

ひと晩経った今も、髪はまだきっちり巻かれている。

私はそれをかき上げて、結わいてみた。

 

 

 

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