今週のお題「ほろ苦い思い出」
ほろ苦い思い出。
「ほろ」だ。単に苦いだけでなく、どこか切なく美しいものを含んでいる。
ハッキリいって、そんなものは皆無だ。ひとつたりとも思い出せなかった。絶望的に苦すぎる思い出ばかりである。
なので、バレンタインにまつわる失敗談で勘弁してもらおう。
バレンタインデーに女性が男性にチョコレートを贈る習慣は、すでに私が小学生の頃からあった。若い頃は、盛り上がったものである。
私も一時期は毎年のように誰かしらにチョコを渡していたように思うが、はっきり思いだせるものはほとんどない。それほど軽いものだったのだろう。ちょっとしたイベントだ。なので、このチョコをどういった人に渡したのかも、思い出せない。
恐らく私は、中学生か高校生ぐらいだったのではないかと思われる。
手作りチョコなどというものを作っていた。
特別お菓子作りが得意だったなどということもなく、突然思い立ってこんなものを手作りして、上手くいくはずがない。
そのくせ夢ばかり膨らみ、私の中では確固とした完成図が描かれていた。それには、チョコレートにフワフワのチョコスライス(コポーと言うらしい)が、散りばめられていた。
が、そのコポーがお店で売っていなかったのである。まぁあんなの、削ればできるだろう。ちょうどいいものがうちにある。
かつおぶし削り器だ。
さて、かつおぶしのように乾燥されていない粘度の高いチョコをこれで擦るとどうなるか。
削り器の表面にチョコをなびり付けることになり、ほんの少しばかりのカスを出しただけで、削り器は真っ黒になった。おまけに、洗っても落ちなかった。
このように私の思い出は、苦いだけでなくバカらしいのだ。「ほろ苦い」などという美しさがない。
なので、このような話を引っ張り出すしかなかった。
すみません。ほろ苦い思い出、ありません。