もう17歳か。ピンとこない。
長く一緒に暮らしていたのもあるが、現実から逃げていたのもあった。エルは人間にするともう、84歳になる。
体が小さくあどけない顔立ちなので、歳を取ったと思うことがなかった。気が付くとさすがに、という感じになっていたのだ。
なんともヨボヨボのショボショボで、頼りがない。
これでも歳の割に元気な方だとは思うが、若かった頃とはやはり違う。
すっかり痩せて、足なんかは削げている。
逆に、食欲は凄い。何度食べるんかってぐらい、食べる。
そしてとっても甘えん坊になった。
膝に乗り、すぐに喉を鳴らす。
どこへでもついて来たが、最近はあまり動かなくなってしまった。
思えば先立ったラッキーもミュウも、晩年はそんな感じだった。
認めたくはないが、最後の蜜月なのかもしれない。
エル、私を置いて行かないで、などと声に出すと、泣けてくる。
今、最後の平和な時を過ごしているのだ。背中に常に不穏なものを感じながら。
一日に、何度も何度もご飯をあげている。食べているうちが華だ。
その時は、突然来るだろう。あるいは突然ではなかったのか。
最後の平和は、恐怖と背中合わせだ。
この日々を、大切に過ごさなくてはならないのだ。