調子に乗って、大暴投してしまった。
自覚はなかった。取れると思ったのである。しかし後から思えば、私の思い上がりである。きっと私は遠くへ投げたかったのだ。
相手は、取れる球を投げて欲しかったはずである。
ちゃんと近い距離で、「ここ」と示して待っていた。取れる球を、欲していたのである。球を、取りたかっただろうに。
相手は取りに行こうともせず、「飛んでっちゃった」と笑った。当然返るべき球もないので、キャッチボールはこれで終わった。
最初に球を投げたのは、相手の方である。
私はサインを見誤った。
望むような球を投げることができなかった。
あの人は、もう二度と球を投げないのではないか。
キャッチボールに救いなんてない。そんな声が聞こえた気がした。
無力だ。