詳しいきっかけは忘れてしまったが、YouTubeのおすすめか、SNSでのリンクか、いずれにしろタイトルに惹かれてまた脱線したのが始まりである。
飼い犬が散歩中に野良猫を見つけ、保護したという話。大きなゴールデンレトリバーが、茶トラの猫と仲睦まじくしているサムネイルが決め手であった。犬と猫が仲良くしている動画に弱いのである。
しかし見てみれば、猫は瀕死の老猫であった。
病院に連れて行ったところ、検査の数値は非常に悪く、どうして生きてるのか分からないほどとのこと。
後に白血病であることが判明し、保護主「とーちゃん」は「治療はしないで、最後まで変わらぬ日を過ごす」と宣言した。
とーちゃんはこの猫に「もみじ」と名付け、それはそれはもう本当にとても可愛がっていた。
時に「天使」と呼び、語り掛ける合間にも「ホントに可愛いな、お前」と思わず漏らす。
驚いたことに、とーちゃんは若い男性であった。
それこそちょっと可愛らしいともいえるとーちゃんが、片目の白濁した老猫を可愛い可愛いと愛でているのである。
尊いものを感じた。
ある日は、一緒にお風呂に入った。もみじは大人しくしていた。
ある日は犬の「よもぎ」と一緒に、散歩に行った。とーちゃんは、もみじのためにバギーまで買っていたのだ。もうほとんど寝ているもみじは、目を閉じて外の空気を感じていたことだろう。
その日々は、「最後まで変わらぬ日を過ごす」という言葉に偽りがないことを見せていた。
とーちゃんと、もみじと、よもぎと。
愛の溢れる、幸せな日々である。
そのまま私はとーちゃんのことももみじのことも忘れていたが、ある時YouTubeを開き、もみじが死んでしまったことを知った。
とーちゃんの悲しみは深く、しばらくYouTubeの投稿はお休みします、と言っていた。
とーちゃんとの幸せな日々はほんの一ヶ月半だったとのこと。
しかしその最後の一ヶ月半に、この世を去る最後の一ヶ月半に、こんなに大きな愛情を受けられたのだ。もみじは本当に幸せ者である。
しかしとーちゃんの悲しみを思うと、どうにもやるせない。
この週末、相変わらず私は飲んだくれていた。
ダンナが寝てしまうとやることがなく、私はまたYouTubeを開いたのだ。
すると、とーちゃんが「再会記念」と称してライブ中継をしていたのである。
愛犬よもぎを撫でながら視聴者に向けてトークしていただけだが、元気な姿が見られて良かった。
今YouTubeを開いたら、最新動画がアップされていた。
とーちゃんともみじの一ヶ月半である。
とーちゃんの愛が溢れていて、そこにもうもみじがいないことが一層悲しく感じられる。
どうかこの人が幸せになれますよう。
そしてもみじと再会できますよう。